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2014/05/24 【京都】「集団的自衛権・日米同盟の最前線で、主権を明け渡す安倍政権」 国民の頭越しに米軍「Xバンドレーダー」基地が27日に建設着工! ~IWJによる「憂う会」永井友昭氏インタビュー

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特集 Xバンドレーダー特集 集団的自衛権特集 日米地位協定

 今、近畿地方に初めて「米国領土、米軍基地を防衛するための」在日米軍基地が、地元住民の同意が不十分なまま建設されようとしている。

 2013年2月末、政府は突如として、京都府京丹後市の経ヶ岬にある自衛隊の分屯地に、米軍専用の「Xバンドレーダー」を設置する計画を発表した。その後何度となく行われた住民説明会では、「安全、安心の確保」を求める地元住民の声に対し、京丹後市や防衛省は明確な回答を出せていない。そんななか、5月14日に米軍は、工事業者に着工を許可した。京都新聞の記事によると、京都府や京丹後市は「着工日を事前に伝えるよう」防衛省に申し入れていたが、連絡はなかったという。

※ 京都新聞 5月24日 京丹後Xバンドレーダー近く着工 地元連絡なし

 そして5月26日、防衛省は米軍からの通告に則り、翌日27日に工事を着工することを発表した。

 地元では住民の多くがいまだにこの米軍基地建設に反対している。「米軍基地建設を憂う宇川有志の会」は立地自治体と自衛隊の官舎を除く周辺12地域1000人中、過半数を超える561人の反対署名を集め、京丹後市長を京都府知事に提出した。しかし今回の頭越しの工事着工は、そうした地元住民の声を無視したかたちだ。そもそもこの米軍基地の問題点は何なのか。5月24日、IWJ記者が同会の代表である永井友昭氏に話を聞いた。

  • 記事目次
  • 「反対・賛成以前に一体どのような施設なのかが分からない」
  • 「強力な電磁波による周辺への影響は」置き去りにされる多くの問題点
  • 日米地位協定で特権的な身分を与えられた米軍関係者 ~拭えない事件・事故への不安
  • 有事の際には真っ先に敵の攻撃対象に
  • 「金」と「利権」で地域が分断

■ダイジェスト動画

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「反対・賛成以前に一体どのような施設なのかが分からない」

 自身も経ヶ岬周辺の「地元」に住む永井氏は、「地元からしてみれば、まさに降って湧いた話。地元で望んだ人は誰もいない。『白羽の矢が立った』と言った方が良いかもしれない」と当時を振り返り、反対する理由について、「反対・賛成以前に、あの基地が何なのかが分からない。そうした部分で情報公開と説明を求めている」と語った。

 基地建設は昨年2月22日、訪米した安倍総理とオバマ大統領との会談で、「北朝鮮の核・ミサイル活動」を念頭に追加配備の話が進み、まさに自治体、地元住民の頭越しに決定された。そこからは、市長・知事と防衛省の間で計画は進み、防衛省が地権者を説得するなどして、同年12月までに用地を確保した。しかしまだ1名、基地建設に反対している地権者がいるという。

「強力な電磁波による周辺への影響は」置き去りにされる多くの問題点

 この米軍基地の問題点とは何なのか。永井氏は、「まず第一に、誰も望んでいないこと」と語り、そのうえで大きく4つの問題点を指摘した。

 まず一つは「周辺住民・環境への影響」だ。この最新式のレーダーは、強力な電磁波による環境への影響が懸念されている。2006年に米軍のXバンドレーダーが初めて配備された青森県の車力自衛隊分屯地は、大原野の中にあり、4キロメートル四方には誰も住んでいない。しかし今回の基地の場合は、一番近い集落で200メートルの距離にあり、50メートルも離れていない場所にはお寺の本堂がある。

 そうした場所に作られようとしているにも関わらず、強力な電磁波がもたらす影響について、明確な情報公開がなされていないという。他にも、冷却に使う大量の水の影響など、レーダーそのものに関わる様々な問題点があると、永井氏は指摘した。

日米地位協定で特権的な身分を与えられた米軍関係者 ~拭えない事件・事故への不安

 2つ目は、「160人の米軍関係者」の存在だ。20人の軍人と、技術者と警備員が70人ずつ計160人が配属されるが、「日米地位協定」によって彼らには特権的な身分が与えられる。

 基地内は治外法権となり、沖縄の基地問題のように、様々な事件・事故への不安の声があがっている。沖縄では米軍関係者の起訴は全体のわずか13%だ。永井氏は、「公務中で起きた事件・事故は、裁判権は米軍にある。日本の警察で取り調べても、起訴は日本の検察ではなく、すべて米軍にいく。そしてだいたい温情判決になる」と語ったうえで、「そもそも起訴率13%という数字も、事件事故が発覚したもののうち、ということ。その裏には発覚していない事件・事故がたくさん埋もれている」と指摘。「結局被害者は泣き寝入りさせられる」と懸念を示した。

 最初にXバンドレーダーが配備された青森県では、わずか1年間に、宿舎内での暴力や飲酒が原因で軍属7人が本国に強制帰国。その後も周辺の女性宅への不法侵入や酒気帯び運転など米軍関係者の逮捕事件が相次ぎ、2009年には自損死亡事故を起こし社会問題となっている。

 こうした懸念を永井氏ら地元住民が訴えても、行政は「適切にやります」と繰り返すばかりで、実際に事故・事件が起きた時の対処や、それを未然に防ぐ対策などの具体的な取組みについては、一切答えないという。

有事の際には真っ先に敵の攻撃対象に

 3つ目の問題点は、このレーダーが「敵の標的」になることだ。万が一米国(日本)と他国との間で何らかの有事が発生した場合、最新式のレーダーは敵にとっては真っ先に攻撃対象となる。永井氏は、「真っ先に敵から攻撃を受けた場合、そこに住む我々はどうなるのか」と、基地の危険性を訴えた。

 「米国はこれまで、この基地は米国のための基地なんだ、とずっと言ってきた。『この基地が日本を守ることにもなるのか、これまで米軍の責任者でそう言った人間がいるのか』という質問に対して、防衛省は『答えられない。我々はそうだと理解している』としか答えない」。

 永井氏はこう批判したうえで、「安倍政権が掲げる『集団的自衛権』『日米同盟の深化』の、まさに最前線。民間の土地を奪って、そこに治外法権の基地をつくって、日本という主権国家の主権を明け渡すということだ」と、政府の姿勢を痛烈に批判した。

「金」と「利権」で地域が分断

 そして、永井氏は最後の問題点として「お金による地域の分断」を指摘した。年間3~4億円ともいわれる交付金や、その他様々なお金や利権によって、すでに立地自治体と周辺地域では大きな溝ができており、立地地域のなかでも地権者とそれ以外の間に色々な溝があり、地権者同士でも夫婦の中に溝ができつつあるという。

 永井氏は、「そういう問題が色々とリンクしながら、わずか1500人に全部降ってくる。それでも受け入れるとするならば、何を我々は被らなければならないのかをしっかり見据えて、『それでも腹を括って受け入れるのか』という議論をしなければならない」と訴えた。
(取材・聞き手:柏原資亮、記事:佐々木隼也)

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2014/06/26 「犯人探しをしても、地方議会の問題は改善しない」~セクハラ発言をうけた31歳の女性議員、水野ゆうき我孫子市議インタビュー(ぎぎまき記者)

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 6月18日、都議会の本会議中に発生したセクハラやじ問題は大きな波紋を呼び、この騒動の中で、政界では同じようなセクハラやじが横行していることが明るみになった。4月の衆議院総務委員会で、日本維新の会の上西小百合議員に対し、自民党の大西英男議員が「まず自分が子どもを産まないとダメだ」などとセクハラやじを投げていたことが判明。問題は国会にまで飛び火し、終息する気配を見せない。

※2014/06/24 「野次は一人ではなかった」 塩村文夏都議が、女性を蔑視する野次が飛び交う東京都議会の空気を批判

 セクハラやじについては、地方議会の方が顕著だ。復数の地方議員たちが、自身の被害体験をSNSで告白している。岩上安身がコメンテーターとして出演した24日(火)放送のテレビ朝日「モーニングバード!」でも、地方議会のセクハラやじについて取り上げている。

※【岩上安身のツイ録】世界から厳しい視線 鈴木章浩都議の「言葉による痴漢行為」と尖閣上陸「モーニングバード!」で岩上安身がコメント

 中野区議会の中村延子議員は19日、自身のツィッターで、「さすがに議場では言われた事はありませんが、平場になると『議員なんてやめて結婚しろ』と各級議員から100回以上は言われた事があります」と明かした。個人に反省を求めても、政治の場を変えなければ、問題は改善されないとも訴えている。

 同じく中野区義である森隆之氏も塩村都議の件をうけ、「驚きはありません。もともと、都議会って『そういうところ』という認識だったからです」とつぶやいている。都議会、国会でのセクハラやじ問題は、氷山の一角である。

  • 記事目次
  • 女性議員による、「生理なの?」発言
  • 自民党議員だったら、やじは飛ばなかった
  • 「謝って下さい」すぐに謝罪を求める
  • 可視化することで抑止力になる

  • 日時 2014年6月26日(木) 13:30頃〜
  • 場所 品川近辺
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女性議員による、「生理なの?」発言

 「もしあれが、自民党の女性都議だったら、同じようなやじが飛んだでしょうか」——。

 IWJは26日、セクハラ発言を経験した、千葉県我孫子市の水野ゆうき議員にインタビューを行なった。過去、女性蔑視の発言を幾度と受けてきたという水野議員に、当事者の一人として、今回のやじ問題をどう見るかを聞いた。

 中村区議同様、発言者個人の問題ではなく、地方議会の仕組みやあり方に改善点があると指摘する水野議員は、犯人探しに焦点をあてた報道についても疑問を投げかけた。

 水野議員は、現在31歳。我孫子市議会の中では、最年少の女性議員だ。2011年11月、政党や組織の後ろ盾がない無所属で立候補、28歳という若さで3位当選を果たした。議員となって3年目を迎えた2013年の6月、水野議員は議場で、塩村文夏都議同様、セクハラ発言を受けている。

 「今日はパンツスーツだけど生理なの?」

 2013年6月の我孫子市議会で一般質問を終え、席に戻ろうとした水野議員は、近くにいた女性議員からあり得ない一言を浴びせられた。何の目的でそんな発言をしたのか分からないが、不愉快な想いを与えることは分かっての一言である。

 「本会議中ではないにしろ、男性議員が8割を占める議場で言われた時は、不愉快で恥ずかしかったですね。でも、もっとショッキングなことが別にありました」

 今年3月、さらに彼女の気持ちを傷つけた出来事があった。

 3月の本会議の閉会日となった3月20日、我孫子市長により、副市長と監査委員の人事案件が提出された。監査委員の議案に納得がいかず、賛成できなかった水野議員は、採決中に議場を退席するという行動に出た。自身の意見を表明したに過ぎないのだが、新人の女性議員による「退席」は、一部の議員から反感を買った。

 その日開かれたという議員懇談会の場で、自民党のある男性議員が、水野議員の頭の上に手をぐっと押し付けながら、「そんなんだから結婚できないんだよ」という暴言を浴びせたのだ。

 「とても悔しかった。退席したからといって、ああいうことをされることは侵害。女性議員に言われた一言よりも傷つきました」と、水野議員は当時を振り返った。

自民党議員だったら、やじは飛ばなかった

 なぜ、こういう問題が起きるのか、水野議員はこれまでも自分なりに原因を探り、考察し、ブログなどで問題提起してきた。

 不適切発言がまかり通る理由の一つには、当然、発言した議員のモラルや倫理観の低さにあるが、他方、地方議会の仕組みがそうさせるのではと、水野議員は指摘する。

 「今回は、みんなの党の女性議員に対するやじでした。もしこれが、今、大変勢いのある自民党議員だったら、同じようなやじが飛んだでしょうか。私は飛んでいないと思います。やはり、与党の方が『上』という意識がそこにあるのではないでしょうか」

 水野議員は、もし塩村議員が自民党会派に所属していたら、やじはなかったのではないかと分析。仮に水野議員が与党に属していたら、やじの対象にならなかったどうかは定かではないが、確かに、騒動後、都議会自民党の動きは鈍かった。都知事である舛添要一氏自身もやじが起きた18日、議場にいながらも、目の前で起っていることを把握していなかった。それどころか、笑みさえ浮かべていたのではと批判された。騒動になった後の定例会見の中では、「知事には対応する権限はない」と釈明、笑みについても否定している。共産党都議団が自民党会派に議会運営委員会の開催を求めたことについても、3日の時点で未だ明確な回答をしていないといい、鈴木都議一人の謝罪でこの問題に幕引きを測ろうとする与党の対応に未だ批判は止まない。

※2014/06/20 「早く結婚したほうがいい」とのヤジの際、笑みを浮かべていた舛添知事が釈明

 地方政治に政党政治が持ち込まれていることを強く懸念すると話す水野議員だが、それだけではない。「二元代表制」にあるべきではない、与党vs野党という構図も、期数の長い重鎮議員の意見がまかり通ってしまうという議会の風習も、水野議員は納得できないのだ。

「謝って下さい」すぐに謝罪を求める

 「毅然とした態度を崩さないようにしてきました」

 水野議員は、こうした既存の議会風土に埋没しないよう、常日頃から「是々非々」を貫いているという。新人、女性、無所属であっても、市民から付託された一議員であることは変わらない。市民のために仕事をするのが、地方議員の仕事であるという信念を崩さなかった。セクハラ発言を受けた時も、その都度、相手に謝罪を求めてきたという。

 「生理なの?」と言ってきた先輩の女性議員に対しては、その場で、「謝って下さい」と伝えた。「だから結婚できないんだよ」と頭に手を押し付けてきた男性議員についても、間を置かず、謝罪を求めた。「女性を差別しています。公私混同しないでください」とも伝えた。両者とも、不適切発言を正式に認め、水野議員に謝罪の言葉を述べたという。

 当時のことを、笑顔で颯爽と語る水野議員だが、政治家になってから、急激に白髪も増えたという。見えない所で何度も悔し涙も流してきた。大学卒業後、就職した企業で養ってきた一般常識や倫理観が、政界の場では通じなかったからだ。

 「一人の議員としての政治的判断を、重んじる空気になってきた気がします」

 それでも、毅然とした態度を崩さず、自分の主張をはっきりと伝えていくことで、周囲の姿勢も少しずつ変わってきたと話す水野議員の表情は和らいだ。

可視化することで抑止力になる

 水野議員は過去、自身が受けてきた不適切な言動について、発言者の名前や所属会派は明かしてこなかった。犯人探しをして、批判することもなかった。ただ、日常的に議会の様子や自らの経験をブログやSNSを通して可視化してきたという。それを切り口に、地方議会の現場で見られる議員のモラルや倫理観の低さを批判し、改善するための取り組みを市民に訴えてきた。可視化することは同時に、心ないセクハラ発言の抑止力や予防にも繋がっていると話す。

 今回の騒動で、セクハラやじを飛ばすとどうなるか、その反響の大きさが身にしみた議員は多かっただろう。特に男性議員は襟を正すきっかけとなったはずだ。水野議員はこれを契機に有権者も、自分が住む町の政治について今一度、関心を持ってくれればと願う。

 「有権者はどうしても、国会に注目が行くかもしれませんが、ぜひ自分の住む町の選挙に感心を持って欲しい。選挙活動の時は、候補者は耳障りのいいことしか書かないし、言わない。その人が、議会でどんな活動をしてきたのか検証してから投票して欲しいと思います」

 インタビューの最後に、水野議員に地方政治のおもしろさについて聞いた。

 「自分の政策が非常に通りやすいのはあります。国政では難しいことです。市政と市民の距離が近いので、市民のみなさんが日頃困っていることを、解決する仕事ができるということ。目に見えるので、達成感にも繋がりますね」

 これまで、我孫子市議会では、3人以上の議員で会派を組むことが求められてきたが、水野議員はこの制度にも疑義を唱えてきた。結果、今では2人から会派を組むことが許され、ようやく特別委員会にも参加できるようになった。そして現在、今年3月に設置された議会改革特別委員会で、議会の最高規範となる「議会基本条例」作りに取り組んでいるという水野議員は、議員のモラルや倫理観を条例化することで、セクハラやじがまかり通らない議会の在り方を目指している。(IWJ・ぎぎまき)

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2014/07/06 【滋賀県知事選】「地元の悲鳴は安倍政権批判」 〜坪田五久男候補インタビュー「県民の暮らしが脅かされる」

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 2014年7月6日(日)21時半頃から、滋賀県知事選挙に出馬する共産党県常任委員の坪田五久男(いくお)候補(共産推薦)に、IWJの柏原記者がインタビューを行った。

 坪田候補は「滋賀に広がる庶民の悲鳴は『安倍改革』によるものだ」と言明し、今回の知事選で掲げる主題は「ずばり、安倍政権の暴走阻止にある」とした。

 集団的自衛権の行使容認の閣議決定後、初となる選挙で、自公推薦の小鑓(こやり)隆史候補に戦いを挑む坪田候補。環太平洋経済連携協定(TPP)への参加中止を訴え、消費増税にも反対する坪田候補は、「長らく自民党の票田だった農家や商店が、このところ、自分のような非自民の政治関係者に胸襟を開いて話してくれる」と述べた。

 また、元教師の坪田候補は「子育て支援」を重視し、親の貧困の子どもへの連鎖を憂いて、「子どもの医療費無料制度を拡充させたい」などの抱負を語った。

  • 記事目次
  • 日本の農家が粗末にされている
  • 安倍首相は、県民の暮らしを脅かす
  • Xバンド配備には断固反対

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 「明るい滋賀県政をつくる会」を支持母体として、日本共産党推薦で立候補する坪田候補は、「国政選挙(2013年参院選)に出馬したこともあるが、その際も『滋賀県民を守ること』を念頭に置いていた。今回は知事選ということで、県民の大変な暮らしを何とかしたい、という考えがより強くある」と語った。

 「今は、県民の命が脅かされている状況だ」と述べる坪田候補。「政府が進める改革でも、認められないものについては、県知事として異議を唱える」と口調を強めると、自分が地元の農家出身であることに照らしつつ、TPPへの参加に意欲を見せる安倍政権を糾弾した。

日本の農家が粗末にされている

 「私の実家がある農村でも、10年ほど前からは、集落全体で米づくりを展開している」と坪田候補。米価の継続的下落を背景に、トラクターやコンバインといった農業機械を、各農家が個別に保有することが難しくなっているためだ。

 坪田候補は「今の日本の政治は、農業を粗末に扱っている」と怒りをあらわにし、「競争主義者の政治家が口にする『日本の農家は努力が足りない』との言葉には、違和感を覚える」と語った。

 実際の農業の現場では、合理化が進められていることを重ねて強調した坪田候補は、「TPPで関税が撤廃され、1俵が3000円程度の安価な米が輸入されるようになったら、日本の農家が対抗することは不可能だ」と言い切る。

 食料自給率向上の観点からも、「日本の農家に廃業ラッシュが起こるような状況を、招いてはならない」と力説しつつ、「農業は割に合わない」との見方が世間に定着してしまえば、地方の農村部では後継者不足の問題が一層深刻になると訴えた。

安倍首相は、県民の暮らしを脅かす

 坪田候補は、この4月に安倍政権が断行した消費税の増税にも反対の立場だ。「年金生活者や非正規労働者は、増税のダメージを確実に受けている」と指摘し、「中小事業者の税負担の問題も大きい」とした。

 「消費税を10パーセントにまで引き上げたら、商売を続けられない小売店が続出するだろう」と坪田候補。「先代から受け継いだ事業を、続けたくても続けられない無念さを、私に訴えてきた商店主が現にいる。地元の農家や商店は、自民党の票田という役割を、今後も続けていくことに疑問を抱き始めているのではないか」と話した。

 「県内に聞かれる悲鳴は、概して政治批判に関するもの。安倍首相が進める政治が、県民の暮らしを脅かしている」と続けた坪田候補は、「今回の知事選では、安倍政権の暴走に待ったをかける政策を掲げることが重要だ」と指摘した。「集団的自衛権の行使容認を巡る閣議決定にしても、多くの県民が不安や心配を抱いている」。

Xバンド配備には断固反対

 京都府京丹後市で始まった、米軍「Xバンドレーダー」基地建設の問題に関しては、「イラク戦争を境に、世界は軍縮の方向に向かっていると思う」と述べ、「そういう流れの中で、日本だけが日米安保体制をバックに軍事力を強めるのはおかしい。(迎撃ミサイルが配備されている、自衛隊饗庭野分屯基地との連携性で)滋賀も攻撃対象になり得る。Xバンドレーダーの配備は御免こうむる」と強調した。

 小中学校での教員経験を持つ坪田候補は「貧困の世代継承」にも言及した。「学校の歯科検診で、虫歯が放置されたままの例が目立つが、それは親の収入が低くて、治療を受けさせることが不可能だからだ」。

 坪田候補は、日本の自治体の半分以上で、中学3年生まで医療費が無料であると指摘。滋賀は若い世代の人口流入が比較的多い自治体なので、「滋賀も、子どもの医療費無料制度を中学卒業まで拡大すべきだ。子育て世代を支援し、彼・彼女らが『滋賀に定住して良かった』と思えるような行政サービスを充実させたい」と意気込みを語った。【IWJテキストスタッフ・富田/奥松】

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【IWJブログ】「集団的自衛権の閣議決定は憲法を踏みにじる暴挙です!」――長崎平和式典で安倍総理を前にして果敢に批判した被爆者・城臺美弥子さんが胸の内を激白 「戦争への道は絶対に許せん!」

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特集 戦争の代償と歴史認識

 人類史上初の原爆投下から69年が経ち、今年も広島、長崎では核廃絶を訴える平和記念式典が開かれた。2つの「原爆の日」は、戦争をめぐる市民と政府の考えの違いを浮き彫りにし、現場では、さまざまな立場の人間の思いが交差した。

 IWJは式典の模様をUst中継し、式典参列者に多数のインタビューを敢行した。さらに、安倍総理の目の前でアドリブを交えながらスピーチし、集団的自衛権をめぐる解釈改憲を糾弾した被爆者代表の城臺美弥子(じょうだい みやこ)さんへインタビューも行い、止むに止まれぬ思いを聞いた。

  • 記事目次
  • 松井一実市長「信頼と対話による新たな安全保障の仕組みづくりを」
  • 平和主義のもとで69年間戦争をしなかった事実を重く受け止めよ
  • 安倍総理挨拶
  • 原爆被害国が集団的自衛権で米国に追随するという矛盾
  • 69年目の朝を迎えた長崎では
  • 戦争、原爆体験者たちの声、「戦争からは何も得られない」
  • 田上市長、集団的自衛権に言及
  • 「集団的自衛権の行使容認は、日本国憲法を踏みにじる暴挙」
  • 「この子たちを戦場にやれるか」城臺さんのアドリブスピーチの真相
  • 「去年まではこんな危機感はなかった、今年は違う」

松井一実市長「信頼と対話による新たな安全保障の仕組みづくりを」

 2014年8月6日、原爆が投下され、69年目の朝を迎えた広島は、大雨洪水警報が発令され、強い雨に見舞われていた。

 雨の中の式典開催は43年ぶりだという。平和記念公園で開催された原爆死没者慰霊式・平和祈念式には安倍総理のほか、米国のケネディ駐日大使など、68カ国の代表らが参列。式典には約4万5千人もの市民が訪れた。

 広島市の松井一実市長は式典で、複数の被爆者の体験談を交えた「広島平和宣言」を読み上げた。

 「当時12歳の中学生は『今も戦争、原爆の傷跡は私の心と体に残っています。同級生のほとんどが即死。生きたくても生きられなかった同級生を思い、自分だけが生き残った申し訳なさで張り裂けそうになります』と語ります。辛うじて生き延びた被爆者も、今なお深刻な心身の傷に苦しんでいます」

 さらに、「『本当の戦争の残酷な姿を知ってほしい』と訴える原爆孤児は、廃墟の街で、橋の下、ビルの焼け跡の隅、防空壕などで着の身着のままで暮らし、食べるために盗みと喧嘩を繰り返し、教育も受けられず、ヤクザな人々のもとでかろうじて食いつなぐ日々を過ごした子どもたちの暮らしを語ります」と語り、原爆投下後の凄惨な広島の姿を紹介した。

 その上で松井市長は、「子どもたちから温かい家族の愛情や未来の夢を奪い、人生を大きく歪めた『絶対悪』をこの世からなくすためには、脅し脅され、殺し殺され、憎しみの連鎖を生み出す武力ではなく、国籍や人種、宗教などの違いを超え、人と人との繫がりを大切に、未来志向の対話ができる世界を築かなければなりません」と述べ、核兵器を「絶対悪」と位置づけ、批判した。

平和主義のもとで69年間戦争をしなかった事実を重く受け止めよ

 続けて、松井市長は、「その『絶対悪』による非人道的な脅しで国を守ることを止め、信頼と対話による新たな安全保障の仕組みづくりに全力で取り組んでください」と政府に提言し、憲法に言及した。

 「唯一の被爆国である日本政府は、我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増している今こそ、日本国憲法の崇高な平和主義のもとで69年間戦争をしなかった事実を重く受け止める必要があります。

 今後も名実ともに平和国家の道を歩み続け、各国政府と共に新たな安全保障体制の構築に貢献するとともに、来年のNPT(核不拡散条約)再検討会議に向け、核保有国と非核保有国の橋渡し役として、NPT体制を強化する役割を果たしてください」

 「集団的自衛権」をめぐる閣議決定に触れるかが注目されたが、現行憲法のもとで69年間戦争しなかった事実を受け止める必要がある、と指摘し、政府を牽制するにとどまり、集団的自衛権の行使容認を決める7月1日の閣議決定に直接的に言及し、批判することはなかった。

安倍総理挨拶

 安倍総理は挨拶で、「戦争被爆国として核兵器の惨禍を体験した我が国には、確実に、『核兵器のない世界』を実現していく責務があります」と話し、日本が昨年の国連総会で核軍縮決議を提出したことをアピール。「包括的核実験禁止条約の早期発効に向け、関係国の首脳に直接、条約の批准を働きかけるなど、現実的、実践的な核軍縮を進めています」と述べた。

 その上で、「核兵器の惨禍が再現されることのないよう、非核三原則を堅持しつつ、核兵器廃絶に、また、世界恒久平和の実現に、力を惜しまぬことをお誓いし、私のご挨拶といたします」と締めくくった。

 安倍総理は、「核兵器」にだけ焦点を絞り、同じく「核」の問題である福島第一原発事故に触れることはなかった。また、平和を誓う場でありながら、安倍政権による「武器輸出三原則」の変更、集団的自衛権に関する閣議決定など、今年に入ってからなされた、平和国家としての戦後日本のあり方を左右する重大な政策変更に関する説明もなく、昨年同様、第一次政権時では盛り込んだ「憲法遵守」の文言もなかった。

 閣議決定によって、憲法解釈を変更してしまうという総理が「憲法遵守」という言葉を口にするはずもない、とはわかっていたものの、憲法99条に定められた、憲法尊重擁護義務をどう考えているのだろうと寒々とした思いにとられた。

 安倍総理の挨拶が「コピペ」だったことは、別の稿で詳しく述べる。

原爆被害国が集団的自衛権で米国に追随するという矛盾

 東京から式典に参列しにきたという女性は、原爆を透過した米国と、その米国に追随してゆく集団的自衛権の行使に強い疑問を示した。

 「原爆の大元は米国ですよね。広島、長崎の人たちが原爆被害を受けたのだから、日本と米国との関係はどうなのか、ということをきちんと政府はしなければいけない。なのに、集団的自衛権は米国政府に追随していく流れですから、本当に矛盾していますよね」

 他方、原爆死没者慰霊碑に献花していたある女性は、集団的自衛権の問題について「仕方ない」と語った。

 「息子がいますから戦争になるのは嫌だな、という思いはありますが、なかなか難しい時代にきたな、とう気がします。中国、北朝鮮とのことを考えたらまるまる反対はできないかな、と思います」

 同じく慰霊碑に献花していた男性は、式典に参列するため、東京から来た、と語った。

 「私の親父の兄も戦争で亡くなっています。原発をなくすのは当然ですが、集団的自衛権の閣議決定もした。抑止力とは言いますが、戦争へ行く危ない道を選んでいるのではないかと思います」と話し、広島市長のスピーチにももの足りなさを感じたと語った。

 「広島市長さんがもうちょっと踏み込んだ話をされるかと思っていたが、直接的には触れなかったのでちょっと残念だった。はっきり言ってもらいたかった」

 会場に入れず、式典のスピーチを会場外で聞いていた名古屋からきたという男性は、「安倍さんが集団的自衛権で米国と一緒に戦争するという中で、安倍さんの言葉が空虚に聞こえた」との感想を口にし、その上で安倍政権への危惧をこう語った。

 「歴代の首相が、なんとか米国の要請に対して、憲法9条を盾に自衛隊派兵などを断ってきたのに、安倍さんは全部潰してしまう」。安倍さんに求められているのは、韓国や中国、北朝鮮とうまくこの地域で共存していくための外交努力ではないか」

 大雨の影響で、例年よりも人の集まりが少なかったというが、式典会場近くの原爆ドーム周辺では、さまざまな市民団体が平和集会を開いていた。デモ隊は「戦争反対」「安倍は帰れ」などとシュプレヒコールを上げながら行進し、中国電力本店に移動。原爆と原発、戦争に反対の意思を示した。

2014/08/06 【広島】原爆投下から69年、「核兵器廃絶」「反戦」広島市長が政府に提言

 他方、今年も「在日特権を許さない市民の会」などのレイシストが平和集会を妨害しようとした。市民団体の平和集会に近づき、「核兵器なしで日本はどうするんだ」などと怒鳴り声を上げたが、その数は10人に満たず、すぐさま警察官らに離れるよう誘導され、集会への影響は皆無だった。

69年目の朝を迎えた長崎では

 広島に続き、2発目の原爆を投下された長崎では、8月9日、原爆投下から69年の日をむかえた。台風11号の接近にともない、一時は野外での開催が危ぶまれたが、当日は、風は強かったものの晴れ間が広がり、例年通り長崎市平和公園で平和記念式典が開かれた。

 50カ国の代表者も出席し、原爆が投下された11時2分には約6000人の参列者が黙祷を捧げ、平和祈念像下からは、平和を象徴する鳩がいっせいに放たれた。

戦争、原爆体験者たちの声、「戦争からは何も得られない」

 「目をつむったら、亡くなった人の顔が見えたなぁなんて思ってね。悲しくなります」――。

 式に参列した高齢の女性は、戦時中は学徒動員で、軍需工場で働いていたという。IWJの取材に、涙ながらに戦争体験を話した。

 「原爆のときは建物の下敷きになって、だいぶ経ってから助けだされたんですけども、コンクリートだったから、火が燃えてこなくて、助かったんですよ。家族も原爆で亡くなりました」

 その上で、「戦争だけはつまらんですよ。勝っても負けても、何も得るところがない。マイナスばかり。だから今、ガザとかから子どもや年寄りが怪我して運ばれたりするのを見るとかわいそうで。当時を思い出しますよ」と続け、涙を拭いた。

 爆心地から目と鼻の先にある現・長崎大学病院で原爆投下の日をむかえたという被爆者の男性は、「体は全面ガラスでやられ、目も片方失いました」と右目の義眼を見せる。同時に母親も失ったという。

 男性は平和祈念像に手を合わせ、「この60年間無事に平和を守ってきたが、これから先、どうやってこの平和を守っていくか、よく見守ってください、という気持ちでお祈りしました」と胸のうちを明かした。

 当時、防空壕に避難していたという女性は、「昨日のことのように原爆が落ちた日を思い出しました」と語る。

 「戦争はバカみたい。とんでもない。戦争がないのが一番。結局、戦争があったことないから実感できないから、安倍総理だって実感がないから平気で何でも言えるのかもしれない」

 続けて、「みんな逃げ惑って、私なんて近くにリュックサックも落ちていたのに、(防空)ずきんだけ持って逃げるくらい慌てたんですから。防空壕に逃げて、みんなに会って手を握ってからやっと安心した」と戦争の恐怖を振り返った。

田上市長、集団的自衛権に言及

 式典では、田上富久長崎市長が長崎平和宣言を読み上げた。

 田上市長は、「核兵器の非人道性に着目する国々の間で、核兵器禁止条約などの検討に向けた動きが始まっているが、一方で、核兵器保有国とその傘の下にいる国々は、核兵器によって国の安全を守ろうとする考えを依然として手放そうとしない」と述べ、核兵器を手放そうとしない各国の動きに懸念を示した。

 さらに、「核戦争から未来を守る地域的な方法として、『非核兵器地帯』があり、現在、地球の陸地の半分以上が既に非核兵器地帯に属している」と指摘。日本が属する北東アジア地域を核兵器から守る方法の一つとして、非核三原則の法制化とともに、『北東アジア非核兵器地帯構想』の検討を始めることを、日本政府へ向けて提言した。

 また、「今、わが国では、集団的自衛権の議論を機に、『平和国家』としての安全保障のあり方について、さまざまな意見が交わされています」と、広島市長が触れなかった集団的自衛権へも言及した。

 「被爆者たちが自らの体験を語ることで伝え続けてきた、その平和の原点が今、揺らいでいるのではないか、という不安と懸念が生まれています」と指摘するとともに、日本政府へ、「この不安と懸念の声に、真摯に向き合い、耳を傾けること」を強く求めた。

 最後に、「東京電力福島第一原子力発電所の事故から、3年がたちました。今も多くの方々が不安な暮らしを強いられています」と原発事故に触れ、一日も早い福島の復興を願うとし、核兵器のない世界の実現のために努力すると宣言した。

「集団的自衛権の行使容認は、日本国憲法を踏みにじる暴挙」

 被爆者代表として登壇し、「平和への誓い」を読み上げたのが、城臺美弥子(じょうだい・みやこ)さんである。城臺さんは6歳のときに、爆心地から2.4キロ離れた自宅で被爆した。

 「たった一発の爆弾で、人間が人間でなくなり、たとえその時を生き延びたとしても、突然に現れる原爆症で多くの被爆者が命を落としていきました。私自身には何もなかったのですが、被爆3世である幼い孫娘を亡くしました。わたしが被爆者でなかったら、こんなことにならなかったのではないかと、悲しみ、苦しみました」

 被爆者としての苦しみを打ち明ける城臺さんは、続けて核兵器廃絶を訴え、唯一の被爆国である日本が国際的なリーダーシップを発揮するよう求めた。さらに安倍総理らを目前に、「今、進められている集団的自衛権の行使容認は、日本国憲法を踏みにじる暴挙です」と厳しく糾弾。「日本が戦争できるようになり、武力で守ろうと言うのですか」と問いかけた。

 「武器製造、武器輸出は戦争への道です。いったん戦争が始まると、戦争は戦争を呼びます。歴史が証明しているではないですか。日本の未来を担う若者や子どもたちを脅かさないでください。被爆者の苦しみを忘れ、なかったことにしないでください」

 式典で事前配布されたパンフレットには、長崎市長の「長崎平和宣言」などとともに、城臺さんの読み上げた「平和への誓い」の全文も掲載されていたが、「日本国憲法を踏みにじる暴挙です」という文言は原稿にはなかった。アドリブだったのだ。

 城臺さんは続けて原発問題にも言及。「福島には、原発事故の放射能汚染で、いまだ故郷に戻れず、仮設住宅暮らしや、よそへ避難を余儀なくされている方々がおられます。小児甲状腺がんの宣告を受けて、おびえ苦しんでいる親子もいます」と述べ、再稼働へも疑問を呈した。

「この子たちを戦場にやれるか」城臺さんのアドリブスピーチの真相

 城臺さんはどのような思い出式典に臨み、どのような思い出スピーチしたのか。IWJは、城臺さんにインタビューをするべく、連絡をとった。

 城臺さんはやはり原爆の日、アドリブでスピーチを一部、変更したのだという。

 「あれは日頃から思っていることを言ったんです。私は『被爆講話』で、中高生に被爆体験を語っていますが、『どうして原爆が投下されることになったか』という被爆の歴史的背景も語っています。それだけでなく、『現在はこんな段階だが、これからこんなふうになるかもしれない』という先のことも話しています」

 城臺さんは「被爆談話」を通し、普段から自分が思っていること、伝えてきたことが、壇上でも自然と口をついた、という。

 「私が今、一番頭にきていたのは集団的自衛権です。国民の理解も求めぬまま憲法を曲げていった。戦争をくぐり抜けてきた人は、『憲法によってこれまで生きてきたんだ』とみんな思っています。『憲法がああしたやり方で、戦争を体験していない方々に曲げられていったら、今の日本の平和はない』と、体験から思っています」

 用意した原稿は、スピーチの持ち時間として与えられた5分に収まるようまとめたものだが、城臺さんには、「思いはいっぱいあった」。

 「開式の1時間前から会場に座っていましたが、(設営スタッフらが)一所懸命に会場を準備する姿、会場に入ってくる方々をみていました。同級生らはみんな病気になって、もう歩けなくなっている人もいます。私の一番の親友から、いつ逝ってもおかしくない、という電話が昨日かかってきました。走馬灯のように思い出されているときに、公明党の山口さんが入ってきたんです」(IWJ・原佑介)

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2014/10/08 【鹿児島】川内原発、揺らぐ規制委の判断基準、火山地質学者が審査のありかたを批判~井村隆介・鹿児島大准教授インタビュー(聞き手:原佑介記者)

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 原子力規制委員会の「新規制基準」適合性審査を通過したことで、再稼働の最有力候補と言われている鹿児島県・川内原発。しかし、火山大国である鹿児島で、川内原発は、十分に噴火のリスクに備えているのだろうか。IWJは10月8日、鹿児島大学准教授で火山地質学者の井村隆介氏に話を聞いた。

 規制委は、「鹿児島のカルデラ噴火には約9万年の周期があり、現在、マグマが浅いところにあるという情報もない」として、巨大噴火リスクが「十分に低い」と判断しているが、井村氏の見方は違う。

 インタビューの中で井村氏は、「例えば阿蘇カルデラは、この約27万年の間に4回大きな噴火をしています。1回目と2回目の間は十数万年空いているんですが、2回目と3回目の間、3回目と4回目の間は2〜3万年しか空いていない」と述べ、噴火の周期は噴火リスクが低い根拠にはならない、と指摘。その上で、すでに巨大噴火を引き起こす量のマグマが充填されている可能性に言及し、規制委の主張に真っ向から異を唱えた。(IWJ・原佑介)

  • 記事目次
  • 火山学の限界と御嶽山噴火から学ぶ教訓
  • 「巨大噴火の前兆はつかめる」という国の主張は信用できるのか
  • 「300万人が即死」超巨大噴火の被害予想
  • カルデラ噴火には「周期性がある」という欺瞞に異論
  • すでに超巨大噴火分のマグマは充填されている!?
  • 年に1000回噴火を繰り返す「桜島」。巨大噴火の前兆か?
  • 地元・鹿児島県民の思い、井村氏が発言する理由

  • 日時 2014年10月8日(水) 15:00~
  • 場所 鹿児島大学(鹿児島市)

※以下、@IWJ_AreaCh1での実況ツイートをリライトして再掲します

火山学の限界と御嶽山噴火から学ぶ教訓

IWJ原「今回の御嶽山の噴火は、戦後最悪の火山被害となりました。いまだに登山者の捜索は続いていますが、なぜ、ここまでの事態になってしまったのでしょうか。というのも、火山学者の皆さんは、現在の火山学問水準では噴火の予知は困難である、といいますが、それでも、もう少しどうにかならなかったのでしょうか」

井村先生「御嶽山の噴火は、火山学的には小規模な噴火でした。しかし、たまたま休日の昼頃、もっとも登山客が多いタイミングで起こってしまった。噴火予知・予測の問題もあったが、一番の要因は、側に人がいたことが大きいと思います。

 直前に地震があって、それを前兆としてレベルを上げられたんじゃないか、という話もありますが、直接、登山者に知らせたとしても、数分前に取れる行動は相当、限られてきます。巻き込まれた人は運が悪かったし、助かった人もたまたまだった、と考えるしかないのではないか、と思っています」

IWJ原「御嶽山の噴火から、どのような教訓を得られたと考えられますか? 今後、教訓をどう活かせばいいでしょう」

井村先生「確かに、直前にいくらかの現象があったので、そういう情報が、一般の方にもつかみ易くすることが大事だと思います。

 今回の噴火は、活火山ではどこで起こってもおかしくない現象です。登山に行く前には必ず天気予報を見るように、登山者の方が『地震が増えている』『しばらく前に噴火したんだ』という情報をつかみ易いシステムを作ることが大事だと思います。

 むしろ今まではラッキーで、たまたま噴火した時に天気が悪くて人が登っていなかった、あるいはオフシーズンだった、または昼ではなかった、というだけで、小さな噴火は度々起こっていたんです。よく調べたら、火山灰が出ていて噴火していた、ということは霧島山でもありました」

「巨大噴火の前兆はつかめる」という国の主張は信用できるのか

IWJ原「菅官房長官や規制委は、『御嶽山の場合、水蒸気噴火だったから予知が難しかった』として、川内原発に影響を与えるような超巨大噴火は、『前兆がつかめるので、審査は見直さない』という姿勢ですが、この姿勢はどうでしょう」

井村先生「今回も、2週間くらい前から小さな地震が増えていましたが、それがどうつながるかはわかりませんでした。あとからみれば予兆だった。もしこのままマグマ的な噴火に移行すれば、水蒸気噴火が前兆だった、ということになります。そうなれば、『マグマ噴火もわからなかった』ということになります。

 新燃岳の噴火はそうでした。2011年1月26日に新燃岳はかなり大きな噴火をしました。2008年から水蒸気噴火していて、それが噴火の前兆だったと火山学者は考えています。

 しかし、当時は新燃岳の水蒸気噴火は完全に寝耳に水で、微動が出てから『何かあったのか』と調べてみたら火山灰が出ていたので、『さっきの微動は噴火だった』とわかったんです。その後、2009年頃から急に新燃岳が膨張し始めたが、それが300年に1回の噴火に繋がるとは誰も思わなかった。

 そう考えると、マグマの噴火だからといって直前に必ずわかるものではありません」

IWJ原「予兆が起きてもキャッチすることが難しい、ということですね」

井村先生「キャッチしても、それが予兆であることを事前にわかることが難しい、ということだと思います」

IWJ原「規制委は、前兆が現れたら、空振り覚悟で原子炉を停止する、としていますが…」

井村先生「桜島周辺では今、地盤が伸びているわけですが、これを前兆だと考えると、鹿児島県の経済活動が止まってしまいます。今、1年間に0.01立方キロメートルのマグマが蓄積されていると考えられています。しかし、この状況だと原発は止めない、ということですから、『じゃあどこまで行ったら止めるの?』ということになりますが、そこは議論されていません」

IWJ原「チキンレースのようになっていきますね。いざ前兆をキャッチして『原発を止める』というときには、きっと『これは前兆なのかどうか』という議論が起こり、意見が対立すると思います。そのとき、安全側に立って判断してくれればいいが、そうなる保障もない。明確なラインが引けていない、ということが問題ではないでしょうか」

井村先生「カルデラ巨大噴火が想定されるとなれば、鹿児島だけでなく、九州南部の方々を全員、避難させなければいけない。前兆をキャッチできたら、原発よりも避難ことを考えてほしいと思います」

「300万人が即死」超巨大噴火の被害予想

IWJ原「カルデラが噴火した際に予想される被害とはどれほどのものなのでしょう」

井村先生「3万年前の姶良カルデラの噴火では、半径80〜100キロくらいまで火砕流が到達しています。半径100キロくらいとなると、200〜300万人くらいが影響を受けます。カルデラの予兆がわかれば、燃料を運ぶと同時に300万人を避難させなければいけない。そう考えると、『空振り覚悟』などと言われたらたまらない。300万人を逃がすことだけ考えたいのに、原発のことまで考えたら誰も対応できないと思います」

IWJ原「300万人を避難させるには、どれくらいの時間を要しますか?」

井村先生「1〜2週間では絶対に無理だと思います。200〜300万人というのは、直接、火砕流で亡くなる人の数です。その規模のカルデラ噴火が起きれば、日本中に火山灰が積ります。そうなると、東京でも『避難した』とはいえないような噴火になります。東京には数十センチの火山灰が降り注ぎます。3万年前の火山灰は、東北地方で数センチの厚さで火山灰が見つかっています。

 日本中が噴火に対して万全の体制で臨まなければいけないときに、原発があると、『放射能も来るかもしれない』という話が加わってしまう。川内原発はカルデラ噴火が起こった時に影響がある場所に存在する、ということが問われるべきなんだと思います」

IWJ原「原子炉を停止し、燃料搬出するまでには5年かかる、と言われていますが、人を避難させるだけでも難易度が高いんですね」

井村先生「だから空振りはなかなか許されるものではありません。日本中が目一杯カルデラ噴火に備えれば、日本中の経済活動も止まってしまう。ギリギリまで(原発を停止する、という)判断を我慢しなければならなくなると思います。原発を停めて燃料棒を運び出したというのに『みんなは今までどおりここに住んでいていいよ』とは言えないでしょう。確実に死ぬわけですから、予知・予測を含め、日本中が考えなければいけないと思います」

IWJ原「5年前に前兆をつかめる確率はどれくらいありますか?」

井村先生「全然わかりません。経験したことがないから。私たちは経験を重ねて将来予測をする、ということをやっていますが、経験したこともないのに前兆がどれくらい前に出るかなど、わかるものではない」

カルデラ噴火には「周期性がある」という欺瞞に異論

IWJ原「規制委は破局的噴火の可能性は低い、と言っています。その根拠は、『カルデラは9万年の周期で噴火しており、最近は3万年前に爆発したから、あと6万年くらい猶予がある』といったものです。これはあてになる理論なのでしょうか」

井村先生「まず、『9万年』の根拠をしっかり議論する必要があります。9万年の根拠は、周辺の加久藤カルデラ、小林カルデラ、姶良カルデラ、阿多カルデラ、鬼界カルデラの5つのカルデラを一緒くたにして『平均すると9万年です』としているんです。本来はカルデラごとに評価しなければいけない。

 例えば阿蘇カルデラは、この約27万年の間に4回大きな噴火をしています。1回目と2回目の間は十数万年空いているんですが、2回目と3回目の間、3回目と4回目の間は2〜3万年しか空いていない。仮に9万年間隔だとしても、活断層は12〜13万年前までに動いたものが活断層と認定されていることを考えれば、9万年だと、活断層の場合は完全にアウトになります。完全にダブルスタンダードになっています」

IWJ原「井村先生は産総研で活断層の研究もされていました。規制委の、火山と活断層の扱いの違いについてどう思われますか」

井村先生「私は火山と活断層両方見てきたので、『なんでだろう』と思います。数万年に一回しか動かないのなら、活断層だって(気にしなくて)いいだろうし、地震だってモニタリングすればいい、ということになる。火山については、福島の事故以降、とってつけたような基準をつけました。最初にもっと議論しておけば、こんなことにならなかったと思います」

IWJ原「貞観地震や宝永地震では富士山噴火が連動した、ということがありました。例えば東日本大震災のような巨大地震が川内原発周辺で起きた場合、それがキッカケとなって、加速的に前兆のないカルデラ大噴火が引き起こされる、ということはありえませんか?」

井村先生「マグマが準備されていれば、何かをキッカケに大噴火が起こる、ということはあると思います。もっと言えば、台風くらいでも気圧が下がることで噴火のキッカケになる、ということがあると思います」

IWJ原「仮に早い段階で予測できたとしても、何かキッカケ次第では横槍が入ったことになり、噴火が早まることもある、と」

井村先生「あります。活断層も周期性があるといわれていますが、3.11の影響で『こっちは応力がかかるようになり、こっちは解放された』ということがありました」

 3.11以降、地震や活断層の動きで新たな歪がかかったところで大きな地震が起きたりしているので、何かのキッカケで今までの方程式が崩れる、ということも普通にあると思います」

すでに超巨大噴火分のマグマは充填されている!?

IWJ原「仮に言われているように、3万年前に姶良カルデラが噴火していたとして、この3万年の間にどれくらいのマグマが溜まっていて、これが噴出したらどれほどの規模の被害になるのでしょう」

井村先生「例えば、VEI(噴火の規模)7の巨大噴火の場合、『数百立方キロ』のマグマが出るんです。VEI6だと『数十立方キロ』、VEI5になると『数立方キロ』で、桜島の大正噴火のときは『数立方キロ』のマグマが出たんです。『数百年に1回』の噴火の規模だと言われています。

 そうなると、年に0.01立方キロずつ、カルデラの下にマグマが蓄えられているので、もし3万年間、毎年0.01立方キロずつ溜まってきたのであれば、今、300立方キロ溜まっていることになる。ときどき『数十立方キロ』のマグマを出しても、誤差の範囲くらいですよね」

IWJ原「すでにVEI7の噴火の準備はできている、ということですか?」

井村先生「かもしれない。だから九電も規制委も、(噴火前に)急激な変化があるはずだというが、もう急速な変化が必要ない、ということになる。キッカケがあれば動いてしまうかもしれない。それを無視して『ドルイット論文』だけで進めているのが、現状だと思います。噴火直前の数十年前にマグマが急激に溜まるというのであれば、このあたりの噴出物を使って同じ手法で分析し、同じ結果になったという証拠を出すべきです」

年に1000回噴火を繰り返す「桜島」。巨大噴火の前兆か?

IWJ原「桜島の噴火が頻繁になっていますが、どうみていますか」

井村先生「僕が学生だった80年代中盤から後半、爆発の回数は今の半分くらいでしたが、出ていた火山灰は今の10倍くらいでした。なので、マグマは30年前のほうがずっと出ていたんです。当時は地盤の伸びも止まっていました。ようするに、噴出する分と下から供給する分のバランスが取れていたということです。大正噴火を起こして、地盤が縮んだ。昭和噴火で溶岩が出てまた縮んで、そのあと、ずっと溜まっていたんですが、その後は止まったんです。

 噴火活動が収まってくると、また地盤が伸び始めて、今は上からちょろちょろ出しているんですけど、伸びは依然として続いていて、あと数十年で大正噴火と同じだけの地盤の伸びに戻る、ということ。だから大正噴火に近いのが来るのではと備えています。

 だけど、注意しなければいけないのは、大正クラスの噴火は数百年に1回の噴火で、次の噴火も同じようにと考えているが、そうならなかったのが『東北』で、多くの人が数百年に一度くらいのが来ると思っていたが、突然千年に1回のものが来てしまった。私たちは数百年に1回の規模であればなんとか対応できるが、数千年に1回の規模の噴火がきた時には、『ごめんなさい』するしかない。次は、数万年前に1回のものがくるかもしれない。地震学も火山学も、今の科学ではわからないんです」

IWJ原「桜島の噴火はカルデラと連動しているのでしょうか?」

井村先生「それもわからない。数十年後にふり返って、『そうだったかも』というくらいの話です」

IWJ原「今、前兆を見逃している可能性もあるかもしれませんね」

井村先生「そうですね。後になって、『こんなに火山灰が降るようなところへ住み続けた鹿児島の人間は、リスクを許容していんだ』という話になるかもしれない」

地元・鹿児島県民の思い、井村氏が発言する理由

IWJ原「ここに原発・火山があることに関して、地元の人の声を聞くことはありますか?」

井村先生「聞きます。だからこそ表に出て話をしています。ただ、僕自身も稼働期間中にカルデラ巨大噴火が起きるとは思っていません。ですが、審査のありかたが問題なんです。『リスクはあるが電気代が上がるよりもいい』というならいい。しかし今は、『リスクがない』と言っているんです。彼らがそう言うことで、『鹿児島に住んでいても全然平気』となってしまっている。みんなあまり考えず、桜島の噴火を見すぎて、そんなに怖くないものと思っている。生活圏にないだけで、火口から2キロの範囲内では、御嶽山のようなことがいつも起こっているのに」

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2014/10/29 【鹿児島】薩摩川内市議会議員・佃昌樹氏(社民党)インタビュー(聞き手:IWJ記者)(動画)

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 10月29日(水)、薩摩川内市議会議員・佃昌樹氏(社民党)へのインタビューが、IWJ記者により行なわれた。28日には、市議会の臨時本会議で川内原発の再稼働に賛成する陳情が賛成多数で採択されたことを受け、薩摩川内市の岩切秀雄市長が再稼働に同意する考えを表明している。

■Ustream録画(12:25~ 14分間)

  • 日時 10月29日(水)12:25~(水)

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2014/10/29 【鹿児島】再稼働同意も「議論は尽くされていない」~原発依存を牽制する、川内原発建設反対連絡協議会会長・鳥原良子氏インタビュー(聞き手:IWJ小田垣大志記者)

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 経済的利益優先の名のもとに、原発産業が推進されてきた鹿児島県薩摩川内市。地場産業や観光業が育たず、自前の町おこしという発想が生まれない地域に、原発再稼働の足音が響く。

 川内市議会と市長による、再稼働同意が表明された日から一夜明けた10月29日(水)、北薩ブロック平和センターにて、川内原発建設反対連絡協議会会長・鳥原良子氏へのインタビューを行った。

 教員時代から食品添加物や遺伝子組み換え技術など、生命に関わる食品問題に取り組んできたという鳥原氏は、現在、薩摩川内市民として、息の長い反原発運動の中心にいる。

 火山リスク、避難問題など、主要な論点が議論され尽くさないままに再稼働の現実的な道がひらかれつつある状況を前に、これまでの活動を振り返りつつ、薩摩川内市議会、市長の再稼働同意の問題点について聞いた。

▲鳥原良子さん

  • 記事目次
  • 原発依存の薩摩川内市と、そこに落ちる九州電力の影
  • 国を「信じたい」。再稼働同意会見での市長の淡い「希望」
  • 事故から学べない政府の無策、薩摩川内市の受難

原発依存の薩摩川内市と、そこに落ちる九州電力の影

――薩摩川内市は、原発産業によって財政再建団体の状態から経済的に復興してきた、という背景がありますが、他の産業やこれまで市が進めてきた施策について、どのようなものがあるのでしょうか

鳥原良子氏(以下、鳥原・敬称略)「『姶良市が太陽であれば、川内市は月』という人がいます。姶良は空港に近く、原発なしでも鹿児島市民のベッドタウンになり、栄えています。一方で、川内市は『原発』の暗いイメージがついてしまい、観光客を呼びこむ施策がありません。

 川内市はこれまで、原発頼みの政策を掲げてきました。他市であれば、物産館など、地場の農業、産業を再興するための取り組みをしていますが、一方、川内市は自分たちの力で町おこしをしようとしていません。

 川内駅は九州電力による寄付があり、立派になりましたが、構内の『きやんせふるさと館』には、地元の菓子屋ではなく、他の地域の店が入ってしまいました。

 町が発展する条件は3つあると言われています。第一に若者、第二に馬鹿者、第三によそ者。こうした人々が連携しなければ町は変わりません。川内市は行政にカネがなくなると、九電に無心する、という体質ができてしまっています」

国を「信じたい」。再稼働同意会見での市長の淡い「希望」

――昨日(10月28日)の記者会見の席で、岩切秀雄川内市長が『再生可能エネルギーを推進してきた』と言っていました。具体的にどのような政策をしてきたのでしょうか

鳥原「太陽光、風力などの発電は、自主的に民間企業がやっているだけです。住宅用を除いて、市が助成金を出しているわけではありません。ゼロエネルギー・ハウスについても言っていましたが、土地ぬきで5000万円という高価なもの。市民が導入するでしょうか。

 火力発電のガス・コンバインド・サイクルにすれば60パーセントも熱効率がよいと言われています。ジャーナリストで反原発活動家でもある広瀬隆さんもお薦めしています」

――川内市長は、原発の安全性については国が保証し、たとえ重大事故が起こっても責任をとる、ということを『信じている』と言いましたが、それは彼の本音なのでしょうか。彼もまた、川内市民の一人には違いないと思うのですが

鳥原「『信じている』というよりは『信じたい』という希望なのではないでしょうか。いずれは廃炉にしなければならない、ということは分かりきっています。廃炉の準備をした方が安全な生活を保証できるというのに。

 原子力規制委員会は、保安院から名前が変わっただけ。規制委でなく、推進委です。『議論が尽くされたか』と聞かれれば、『尽くされていない』と答えます」

事故から学べない政府の無策、薩摩川内市の受難

鳥原「国のやり方を見てください。福島への帰還を求めています。年間20ミリシーベルト以下なら帰っていいと言っていますが、これは、国際放射線防護委員会(ICRP)勧告での基準値、年間1ミリシーベルトの20倍です。

 チェルノブイリやスリーマイルの事故後は、技術者を育てる学校ができました。事故に学ぶ、ということはそういうことではないでしょうか。

 ここ鹿児島県では、脱原発の県議候補が当選するのは並大抵ではありません。脱原発を掲げる遠嶋春日児議員の当選は、前回の選挙が3・11直後の時期(2011年4月)だった、ということも一つの勝因となっているのではないでしょうか。

 (川内市には)出る杭は打たれるという雰囲気があります。また、若者が少ない、ということは浮動票が少ない、ということでもあります。つまり、社会的事象が起きても選挙の結果が変わりにくい、ということです」

 川内原発建設反対連絡協議会は、川内原発第一、第二号機を建設する当時から活動してきました。私を応援してくれる人は私によく言います。『隠れ脱原発の人はたくさんいる』と」(取材・記事:IWJ小田垣大志)

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2014/10/29 【鹿児島】「市長も苦渋の決断をしたのでは」〜川内原発再稼働推進派の一人、薩摩川内市議会議員・上野一誠氏(無所属)インタビュー(聞き手:小田垣大志記者)

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141029_薩摩川内市議会議員・上野一誠氏インタビュー

 住民の懸念が広がる中、10月28日、薩摩川内市議会にて、川内原発再稼働の同意が決定した。

※2014/10/28 【鹿児島】川内原発再稼働に「同意」した薩摩川内市長「私は『同意』という言葉を一切使っていません」と責任逃れの弁明

 一夜明けた29日、IWJは薩摩川内市議会議員・上野一誠氏(無所属)に聞き取り取材を行った。

 「慎重に議案を取り扱ってきました」。再稼働推進派の議員として、市議会の同意に至るプロセスに理解を示す上野議員。それでも、記者会見の場で「同意」という言葉を使わず、「理解」という言葉を選んだ市長について意見を聞くと、どこか言いにくそうに「苦渋の決断」であったろうと察する複雑な表情がうかがえた。

  • 記事目次
  • 「市長は『苦渋の決断』をした」? 再稼働推進派議員としての複雑な心境
  • 再稼働が「国策」であることを強調しながらも、議会として「モノを言っていく」という上野議員

  • 日時 10月29日(水)

「市長は『苦渋の決断』をした」? 再稼働推進派議員としての複雑な心境

記者「昨日(10月28日)、薩摩川内市議会にて、川内原発再稼働への同意が決定いたしました。議会のご感想や、現場での雰囲気についてお聞きしたいと思います」

上野議員「市にとって、市議会にとって、先陣を切っての判断ということになりました。福島の思いを受けて、決して忘れてはいけない。教訓にしなければいけない、という思いで議会に臨んでおりました。

 川内一号機、二号機が再稼働できるか、できないか、国策ですので、国が新たな規制基準、適合審査をしっかりと事業所にぶつけていただいて、クリアしたものについては再稼働を進めるというのがエネルギー基本計画ということになります。

 1年6ヶ月、国の政策を見守りながら、今日に至りました。(再稼働への)陳情に対する最終的な賛成、理解を示しましたのが現状です」

記者「昨日(28日)は市庁舎前で抗議運動が展開しておりました。反対派の住民に対しては、どうお考えでしょうか」

上野議員「我々も反対派の住民を参考人として招致してきました。やはり、そういう声を真摯に受け止めて、安全対策を講じていただきたいという思いがあります」

記者「市議会の同意後、市長会見で『私は同意していません』、『同意という言葉は一度も使っておりません』ということをおっしゃっていたのが印象的でした。このことについてどう思われますか」

上野議員「あえて同意という言葉は使いませんでしたけれど、『理解』という表現をされていました。薩摩川内市にとっては再稼働について容認をするということになりますので、そういった意味では苦渋の選択をしたのでは」
(IWJ小田垣大志)

再稼働が「国策」であることを強調しながらも、議会として「モノを言っていく」という上野議員

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2014/10/29 【鹿児島】「子や孫、のちの世代のためにも、闘い続けていく」川内原発再稼働に反対する鹿児島県議会議員・遠嶋春日児氏(無所属)インタビュー(聞き手:小田垣大志記者)

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141029_鹿児島県議会議員・遠嶋 春日児氏インタビュー

 「『同意、という言葉を使っていない』と市長が言うのであれば、(市長、同意と報道した)あらゆる新聞に(市長自ら)激しく抗議すべきだと私は思います」

 川内原発の再稼働をめぐって、地元の「同意」による責任を回避し、再稼働を事実上容認した薩摩川内市長を厳しく批判する鹿児島県議会議員・遠嶋春日児氏(無所属)。原子力規制委員会、資源エネルギー庁の参考人招致を行い、精力的に再稼働反対活動を続けてきた県議として、この結果をどう考え、のちの活動につなげていくのか。今回の結論ありきの地元同意の流れについて、10月29日、遠嶋氏にインタビューした。

  • 記事目次
  • 「『同意』という言葉を使っていなくても、市長同意はまぎれもない事実」
  • 原子力規制庁による審査の甘さ、これからの反対運動の展開

  • 日時 10月29日(水)

「『同意』という言葉を使っていなくても、市長同意はまぎれもない事実」

記者「昨日(10月28日)、薩摩川内市議会にて、川内原発再稼働への同意が決定いたしました。遠嶋議員は、昨日の結果をどのようにご覧になられましたでしょうか」

遠嶋議員「昨日、一昨日は、鹿児島県庁でも、参考人招致をして、さまざまな意見を聞かせていただきました。すべての説明が十分になされていない状態で、臨時議会が開催され、結論を出すということは、あまりにも拙速すぎる、おかしいと言わざるをえない」

記者「昨日の市長会見で、『私は同意は致しておりません』、『同意という言葉は一度も使っておりません』ということをおっしゃっていたのが印象的でした。この発言について、どう思われましたか」

遠嶋議員「『同意をしていない』という発言については、昨日(10月28日)のニュースで放映されていましたけれど、全然おかしいと思います。結果を認識した上で、国の方針を理解する、ということは、再稼働を容認するということ以外のなにものでもない。

 『同意』という言葉を使っている、使っていない、ということは全然関係ない。(市長が)同意をしたというのはまぎれもない事実」

記者「のちに重大事故が起こったとき、いわば同意責任を回避するために使った欺瞞的な手段にも感じます」

遠嶋議員「どの新聞にも『市長が同意』と書かれていましたが、『私は同意、という言葉を使っていない』と市長が言うのであれば、あらゆる新聞に(市長が)激しく抗議すべきだと思います。

 マスコミにはそうした声が届いているんでしょうか。届いていないのであれば、実質、再稼働を容認する、つまり同意をしたということを認めることにほかならない、と私は思います」
(IWJ・小田垣大志)

原子力規制庁による審査の甘さ、これからの反対運動の展開

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2014/10/29 【鹿児島】「闘いだとしても、争いにしてはいけない」新しい世代の市民運動のあり方を模索する鹿児島市在住のラッパー・泰尊氏インタビュー(聞き手:小田垣大志記者)

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 「喧嘩をしに来たわけではありません。話をしにきているんです」

 10月29日、鹿児島県日置市で開催された、川内原発再稼働に係る住民説明会は、怒号と紛糾のうちに終始した。平日の夕方から始まるこの説明会に参加することができたのは、限られた者だけだ。より多くの住民へ、より生活者の目線に立った説明責任を問いかける声は、閉会後もやむことがなかった。

 この日、説明会が開始する前にも、再稼働に反対する市民らは、説明会場前で抗議行動を行っていた。

 前回の説明会に参加しなかった住民は、今回の説明会に参加できないという運営側の方針のため、会場である伊集院文化会館の外で会の終了を待っていた鹿児島市在住のラッパー・泰尊氏。主催者側の理不尽な体制への批判をしながらも、草の根の市民運動への示唆に富む冷静な思いを述べ、若い世代が中心となって生まれる今後の動きについて聞いた。

  • 記事目次
  • 主催者側・九電の不誠実な姿勢に声を荒らげてしまう参加者も
  • 「闘いだとしても、争いにしてはいけない」

■泰尊氏インタビュー

■説明会場前での抗議行動

  • 場所 日置市 伊集院文化会館前

主催者側・九電の不誠実な姿勢に声を荒らげてしまう参加者も

記者「会場に入れず、外から住民説明会を見ていて、どのような感想を持たれましたか」

泰尊氏「(住民説明会の)段取りが悪いけれど、参加者のモラルが悪いのも良くないと思います。喧嘩をしに来たわけではありません。話をしにきているんです。

 最初から声を荒げたら、(主催者側も)聞く耳を持たないと思います。『九電が保証しない』という話を聞いて、良くないと思いましたが、だからといって声を荒らげたら、(主催者側の)思う壺なのでは。

 今日、(説明会の途中に)先に退出した女性がいて、『怒号がひどすぎたから出てきた』と話されました。その後(マスコミの)インタビューを受けたら、(その発言が)番組で使われてしまうんですね。それこそ思う壺で、どこかの誰かさんの策略通りです。

 40年、こうした市民の運動は続いています。声を出せば、揚げ足をとられ、声を出さなければ、何も思っていないと思われる……。そろそろ変わらなければならないのかな、と思います。

 賛成、反対、という言葉が対立の構図を作っています。そこに気づかなければいけないのかな、と思います。肯定でも否定でもない、イエスでも、ノーでもない選択肢について考えなければいけないのでは」(IWJ・小田垣大志)

「闘いだとしても、争いにしてはいけない」

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2014/10/31 【鹿児島】「仮に再稼働しても、ひっくり返すことは可能」――若い世代の反原発運動の中心、天文館ATOMS代表・鮫島亮二氏インタビュー(聞き手:小田垣大志記者)

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 「川内原発再稼働が決まったら、この運営の方法、いわば鹿児島方式が全国に広まってしまうのではないか」――。

 10月29日(水)、鹿児島県日置市にて川内原発再稼働に関する手続きの一環として、住民説明会が行われた。運営側の不備や、説明不足を指摘する声が鳴り止まぬなか、質疑応答を打ち切る形で会は幕を閉じた。一夜明けた10月30日(木)、IWJは、鹿児島市内の若い世代による反原発運動の中心、天文館ATOMS代表の鮫島亮二氏にインタビューした。

 川内原発3号機の増設計画の草創期から抗議を続けてきた天文館ATOMSは、参加しやすい雰囲気を重視した活動を進めてきたという。

 薩摩川内市長が再稼働に同意し、川内原発稼働への道筋が現実的なものになるなか、これまでの活動を振り返り、今後の活動をどのように描いていくのか、鮫島氏に聞いた。

  • 記事目次
  • 「開催した、という事実だけが欲しかったんでしょう」――アリバイ作りとしての住民説明会
  • 「全国どこへでも抗議に行きます」――第二、第三の再稼働候補地へ向けたメッセージ

■Ustream録画(00:15~ 50分間)

  • 日時 10月30日(木) 13:30〜
  • 場所 鹿児島市内のレストラン「チチビスコ」

「開催した、という事実だけが欲しかったんでしょう」――アリバイ作りとしての住民説明会

記者「昨夜(10月29日)行われた、日置市での住民説明会に参加されての感想や、批判の多かった運営方法について、ご意見をお聞かせください」

鮫島氏「住民説明会への申し込みの葉書を出しても、返信がないということがありました。また、住民説明会場にて、座席指定があり、誰がどこに座っていて、どんな発言をしたのかを、(当局が)把握できる仕組みになっていました。

 これまで、鹿児島県5ケ所で住民説明会がありました。そこでは、『100パーセント安全というわけではない』という原子力規制庁の発言への疑問や、避難計画の説明会が行われていない、などという抗議の声がありました。

 昨日の日置市の説明会は、それまでの5会場に参加した人でないと入れない、という、閉ざされた説明会でした。前回の説明会に参加しなかった人は県民ではない、と言っているようなものなので、運営はめちゃくちゃでしょう。説明会が紛糾するのは必然だと思います」

記者「私も昨夜の日置市で行われた住民説明会を取材したのですが、客席はまだまだ空いていました。水曜日の夜という、若い人はなかなか参加しにくい時間帯にあえて開催したためでもあるのでしょうか」

鮫島氏「鹿児島県の全市町村で説明会を開くべきだと思います。女性、特に小さな子どもを育てられている方は、遠方から参加しづらく、最低でも託児室を設けるべきだという意見書を提出しましたが、回答はありません。今回の説明会はアンケートさえありませんでした。参加者の意思や質問を吸い上げるためのアンケートを作ってくださいと、お願いしたのですが、これも無視されました。

 しょうがないから、自分たちで自主的に紙を配って、回収しました。国、県側にとって、今回の説明会は、開催した、という事実だけが欲しかったんでしょう。

 もし川内原発再稼働が決まったら、この運営の方法、いわば鹿児島方式が全国に広まってしまうのではないか、再稼働のスタンダードになってしまうのではないか、と思うと、すごく恥ずかしい。全国の皆さんには、鹿児島県に抗議をしてほしいと思っています。

 避難計画だって、20分で説明できる内容ではないのです。各家庭にある防災無線ですが、非常時にこの電源が切れた場合、どうやって伝えるのでしょう? 耳の不自由な方はどうするんでしょう?

 内閣府の人も不備があるということはわかっていると思います。(昨夜の説明会で)内閣府の担当者が『避難計画に100パーセントはありません。いきなり完璧を求めたら、避難計画を改善するための余地がなくなります』と言っていて、そういう問題ではないでしょう、と思いました。

 この間、川内の海から風船を飛ばして、どっちに行くか、という実験をしました。高度が上がるにつれて、偏西風の影響を受け、東側の熊本、宮崎で風船が発見されることとなりました。もし、原発事故が起きると(放射能が東へ広がり)、日本全国、住むところがなくなります」

記者「昨夜の住民説明会で配られた資料は、内容的に省略されたものでした。例えば、テロのことには全く触れられておらず、そのことについて、手を挙げて質問をされた方もいました。『9・11同時多発テロのような、航空機が突っ込む、というようなテロに対して、どう対処するのか』、というその質問に対し、主催者側は、『新規制基準では、そういったリスクについても考えています』と言いながら、まったく具体的な手段については言及しないままでした」
(IWJ・小田垣大志)

「全国どこへでも抗議に行きます」――第二、第三の再稼働候補地へ向けたメッセージ

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2014/11/06 【鹿児島】鹿児島県庁前でのインタビュー(動画)

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 11月6日(木)13時頃より、鹿児島市の鹿児島県庁前で、IWJ記者による集会参加者へのインタビューが行われた。

■Ustream録画(12:55~ 16分間)

  • 日時 11月6日(木) 13:00頃~
  • 場所 鹿児島県庁前

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2014/11/05 【鹿児島】反原発かごしまネット代表・向原氏「県民の土地から恣意的に排除する事態は呆れたもの」鹿児島県庁舎前、座り込み抗議者インタビュー(聞き手:IWJ記者)

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 「負けるはずないと思っているんです。世論が後押しするのですから」

 10月30日(木)、川内原発再稼働に反対する市民たちによって、鹿児島県庁前にテントが立ち上げられた。この日、テント前で集会が行われ、参加者らは240時間の座り込みを宣言した。他方、県当局は、職員50人、施工業者50人を動員して、テント周辺、車道と歩道の境界にフェンスを設置し、抗議活動を妨害する手段に出た。

 九州地方のみならず、全国から抗議に集った市民がシュラフを持ち寄り、宿泊しながら粘り強く声を上げるなか、11月5日午前、鹿児島県臨時議会が始まった。先週の薩摩川内市議会と同様に、結論ありきの再稼働シナリオが進められていく状況を前に、「反原発かごしまネット」代表であり、「311実行委員会」事務局長・向原祥隆氏ほか、テント前の抗議活動に参加していた女性に、活動の経過と見通しについて聞いた。

  • 記事目次
  • 県庁前での攻防――市民による抗議と当局による妨害行動
  • 全国から届く声援、全国に広がる抗議

■Ustream録画(13:10~ 34分間)

  • 日時 2014年11月5日(水) 13:10~
  • 場所 鹿児島県庁前(鹿児島市)

県庁前での攻防――市民による抗議と当局による妨害行動

記者「今回座り込み抗議を呼びかけられたわけですが、簡単な経緯について、お聞きしたいと思います」

向原氏「9月10日に(川内原発再稼働の前提となる)審査書が確定し、鹿児島県が県内5ヶ所で住民説明会をしました。すべての会場で住民の発言のうち、9割以上が反対の立場からの発言でした。(当局は)それに恐れをなしたのでしょうね。

 火山や活断層など(の対策)がぼろぼろなんですよね。それならば、早く(再稼働を)決めなければならないということなんでしょう。向こうはとても焦っていると思います。『もう決まりましたよ』と既成事実化して、反対活動を無力化しようという狙いだと思います。

 12月末に再稼働するなという仮処分を申請しており、裁判所の判断があります。福井地裁のこの前の裁判で、具体的な危険性が、万が一にでもあれば、差止の根拠になるという判決文がありました。川内原発を見ると、万が一、というものではなく、もう、ぼろぼろ。だから、負けるはずないと思っているんです。世論が後押しするのですから。

 もう一つは、来年4月の統一地方選。いちき串木野市などは(住民の)8割が反対です。薩摩川内市も、6割から7割が反対。今ではもっと多くなっているかもしれません。こうしたことを背景に、できるだけ再稼働を早く決めて、(抗議行動を)静かにさせたい、というのが彼らの考えでしょう。

 そういうむちゃくちゃな状況の中で、すんなり(再稼働を)通すわけにはいきませんよね。だから、先週木曜(10月30日)夜、テントを張りました。(鹿児島県は、そのテントの周りに)フェンスを張ったり、こまごました妨害をしてきますが、こちらから、精一杯の抵抗は示していきたいと思います」

記者「さきほど、午前中の議会を傍聴して、知事報告がありました。国が安全を保障した、とか、住民の理解が進んだ、とか、自分たちの都合の良いことばかりを言って、他方、自分たちに不都合なことには何も言っていません。おととい、日本火山学会はついに、『九州電力の火山の認識はまったく違う』と言いました」

向原氏「議会の中ではもう、議員たちが(シナリオを)決めていますから。今日、本会議が始まりましたが、私は傍聴をボイコットしました」

記者「昨日までは、座り込みに関与した人は、(県庁舎のなかの)トイレも、喫茶店も使えず、県庁舎に立ち入ることさえも、完全にシャットアウトされました。県知事や経産相など、権力の思惑にとって都合の悪い意見を持っている人を、庁舎という、県民の土地から恣意的に排除する、という事態は呆れたものだと思います」

向原氏「3号機の増設時にもこうしてテントを張って抵抗しました。(その時は)柵を設けたり、ということはなかった。知事は了見が狭い。彼は何を恐れているのでしょう。正々堂々とやれ、と言いたいと思います」

記者「今後の予定はいかがでしょうか」

向原氏「テントを建てるときも往生しました。撤去するのももったいかなと思います。県知事が(再稼働同意を)表明したら、強行に(テント排除に)出るとも言われており、それに対して、どう対応するか。反対の意志は消えるはずはないですから。全国に向けて、一つのうねりを作っていきたいと思います。ぜひ、みなさん来てください」
(IWJ・小田垣大志)

全国から届く声援、全国に広がる抗議

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2014/11/05 【鹿児島】川内原発再稼働の県の「同意」を前に市民らが責任転嫁を繰り返す知事・県議会の推進派を批判

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 「我が国の無責任体制を粉砕するのは、県民、国民の力しかないと思うんですよ」

 11月5日(水)、鹿児島県議会臨時本会議が開会し、三日間の会期の末に県議会としての判断が示される見通しとなっている。県議会開会にあわせ、鹿児島県庁の前には、川内原発の再稼働に反対するグループのメンバーおよそ50人が集まり、報告集会が開かれた。

 10月28日に行われた薩摩川内市議会と同様の拙速な議論を牽制し、批判する声が響くなか、IWJは集会に参加した市民に、臨時本会議を傍聴しての感想や、抗議運動の見通しについて聞いた。

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2014/10/28 【鹿児島】川内原発再稼働に「同意」した薩摩川内市長「私は『同意』という言葉を一切使っていません」と責任逃れの弁明

  • 記事目次
  • 「自分の子は自分で、自分の家族で守るしかない」――県と国への深い不信感
  • 「福島が陵辱されたという気になります」――事故収束の目処が経たぬうちの拙速な議論
  • 「我が国の無責任体制」――原子力規制委員会と国、県の責任転嫁が繰り返される構図

■Ustream録画(録画配信映像 50分間)
※現場の様子は動画開始後16分40秒頃からとなります。

  • 収録日時 2014年11月5日(水) 17:00頃~
  • 配信日時 2014年11月5日(水) 22:00~

「自分の子は自分で、自分の家族で守るしかない」――県と国への深い不信感

記者「傍聴はいかがでしたか」

女性1「伊藤知事は、自分の言葉で答えていないし、考えていない。書面を読むだけという感じでした」

記者「避難計画も整備されていないし、規制委員会の審査も終わっていません。そうした中で、まだ(再稼働を)判断する時期でないということは、明らかなのですが」

女性1「何を急いで(再稼働を)しようとしているのか、が疑問です。(伊藤知事の)自分の頭の中のマニュアルがあるように、ことが進められていきます。(臨時本会議で、伊藤知事は)笑っていました。

 残念なのは、鹿児島県知事を選んだのは、鹿児島県民なのだということです。だから、根っこから変えていかなければならないと思いました。自分が旗をもって立つということは、まったくの想像外のことです。本当におかしい時代がやってきたのだと思います。どうにかして生き抜いていかなければならない。

 これから先、自分が未来について考えるとき、人類が共存することのできる自然エネルギー(を使う社会)に向かっていかなければ、人類が滅亡するのでは、というくらいにさえ、思っています。

 福島の事故はまだ終わっていないし、汚染水はまだ流れています。ましてや(使用済み核燃料の)最終処分場も決定していない。にもかかわらず原発再稼働というのは、まったく普通の考えではありません」

記者「今日も、(伊藤知事は)『再生可能エネルギーのバランスを』などと言っていました。にも関わらず、九州電力が(市民によって発電された電力の)買取を拒否していながら、(鹿児島県は)抗議していません」

女性1「子育てをしているうちに、『あ、これはおかしいな』、『子供たちを安心して預けられる時代じゃないんだな』と気づくことがありました。では、自分の子は自分で、自分の家族で守るしかないのだと思いました。自分の足元を見ていれば、おかしいということが分かると思うんです。みんなも気づいてくださるのではないか、と思います」

「福島が陵辱されたという気になります」――事故収束の目処が経たぬうちの拙速な議論

記者「今日の臨時本会議を傍聴されていたと思いますが、いかがでしょう」

女性2「ひどいものです。大事なことが、あんなふうに決められていくなどということは。私は本当に頭に来ています。

 福島が陵辱されたという気になります。なにも解決していない、もっとひどいことになる、という現状で、『なんで再稼働なの? なぜ(伊藤知事は)官僚の言うことを聞くの? 国の方向を見てないで、福島の方を見なさいよ』と言いたいです」
(取材:細井正治、記事構成:IWJ・小田垣大志)

「我が国の無責任体制」――原子力規制委員会と国、県の責任転嫁が繰り返される構図

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2014/04/24 「アメリカから認められてきた再処理がどうなるのか。日本の原子力ピラミッド全体がビビリまくっていると思う」―IWJ中継市民による座間宮ガレイ氏インタビュー

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 「日本がアメリカから認められてきた再処理がどうなるのか。日本の原子力ピラミッド全体がビビリまくっていると思う」―。

 2014年4月24日(木)0時半、鹿児島市内で行われたIWJ中継市民ボランティアによるインタビューで、ブロガーの座間宮ガレイ氏はこのように述べた。鹿児島2区補選の候補者支援のために鹿児島入りしている座間宮氏は、個人やいわゆる「勝手連」として各地の選挙に関わってきた経験をもとに、選挙におけるインターネットの果たす役割について意見を述べたほか、日本とトルコとの間の原子力協定に関連し、政府が協定締結を急いだ背景などについても持論を語った。

  • 場所 鹿児島県内ホテル
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インターネット選挙の利点
 座間宮氏は、インターネットを選挙に活用する利点について、「距離感を縮めることができる。例えば、福岡からでも、北海道からでも、サンフランシスコからでも、同じ距離感で見ることができる」とし、「投票することはできなくても、カンパやボランティアを自主的に呼びかけるといった動きができ、サポートが全国の市民からくる」と語った。また、「組織票の選挙は、当選した政治家が、なぜ自分が勝ったのかよく分かっていないので、政党の命令や地元の有力者の意向を聞く政治家になる」とする一方で、「市民のお金やボランティアで勝ったとなれば、必ず市民一人一人に耳を傾ける政治家になる」と述べ、「お金の流れ、人の流れによって、政治家の質が決まってくる」と強調した。

原子力協定は「ビジネス協定」
 座間宮氏は、日本の原発について、「機微の部分は海外から技術を受けている。技術協力を継続するためには、その国との原子力協定が必要になる」と述べ、「(ベースとなる)日本の原発はアメリカの技術によって造られた。(トルコに日本が原発を建設した場合に)アメリカ製の濃縮ウランを使えと口を挟んでくる」と続けた。その上で、「日本とトルコの原子力協定は、アメリカも参加することができるという『原子力のビジネス協定』。脱原発に向かっているアメリカや日本による『新しい市場の開拓』だ」と強調した。さらに、トルコが原発建設を急ぐ理由として、隣国イランによる核開発問題を挙げた上で、「原発輸出は、『核を持ちたい』という願望につけ込んだものだ」と指摘した。

日米原子力協定延長が大きな転換点に
 続いて、座間宮氏は、日米原子力協定の延長が2018年に迫っていることも説明した。この中で座間宮氏は、オバマ政権が、アメリカから貸与していたプルトニウムの返還を日本に求めたことなど、「極東のプルトニウム事情」の変化を解説した上で、「日本がアメリカから認められてきた再処理がどうなるのか。これは、日本の原子力ピラミッド全体がビビリにビビりまくっていると思う」と述べ、「日米原子力協定延長問題が、本当に、日本の原子力ビジネス、原発問題にとって大きな転換点になる」と断言した。また、プルサーマルが動かないまま、日本がプルトニウムを大量保有していることにより生じる「外交問題」についても触れ、「日本政府がプルサーマル原発を、どれだけ無理やり動かそうとするか注目してほしい」と語った。

原子力協定に関する部分の全文文字起こし

座間宮氏「もちろん鹿児島2区のひとつの争点として、原発というのはあると思っているし、川内原発の再稼働問題。このあいだ広瀬隆さんが、すごい懇切丁寧なレクチャーをしていただいて、僕も活断層の問題は怖いなというのは分かったんですけど。そもそも今の国会で、このあいだ参議院を通過した、日本とトルコの間の原子力協定、ありますね。あれはいったい何なのかという話。すごくざっくりですけど、しようと思います。

 日本の持っている原発というのは、アメリカの技術によって造られた原発なんですね。最初はアメリカから直接輸入していましたけど、今は東芝、日立、三菱はアレバですね、海外の技術協力によって出来ているわけです。つまり原子炉の一番機微の部分、細かい部分は、これは海外の技術なんです。つまり技術協力をしているわけですね。この技術協力を受ける、継続するためには、その国との原子力協定というのが必要になってきます。

 つまり、日本とアメリカの間で原子力協定があることによって、日本の原発は稼働しているし、造れているし、そして、これから本題なんですけど、トルコと日本の間の原子力協定を結んだときに、日本の原発を輸出するときに、これは実は、同時にアメリカの技術を輸出することになるわけです。これは日本の一存ではできないんです。このときに何が必要になってくるかというと、アメリカとトルコとの間の原子力協定が結ばれていなければ、日本がトルコにアメリカの技術の原発を輸出することはできないわけです。分かりますか。

 そのアメリカとトルコの間の原子力協定というのは、ずいぶん昔に結ばれています。1950年代だと思うんですけど。ずいぶん昔にもうトルコとアメリカの間の原子力協定が結ばれているので、今回の日本とトルコの間で原子力協定が結ばれたときに、すんなりそれが、次、トルコが、じゃあ、造ってくださいねとなったときに、じゃあ輸出しますね、となるわけですよ。それはトルコとアメリカの間の原子力協定がなければ、新たにその協定を結ばなくちゃいけないわけですね。そういった技術協力をするためには、そういったものがまず必要であることということ。

 今回、日本とトルコの原子力協定が結ばれた意味というのは、そういう、この3国間での原子力協定が、トライアングルが結ばれているので意味があるということがまずひとつ。で、トルコに日本が原発を輸出しますね。もしも造ったとします。造ったとした場合は、じゃあ燃料をどうしますか、という話になるんですね。そのときに、この原子炉は、アメリカの技術で造られた原子炉ですので、ここに入れるのはアメリカが口を挟んでくるわけです。アメリカ製の濃縮ウランを使え、という話になるわけです。

 日本も濃縮ウランを作る技術は持っていますけど、輸出できるほどの力ではないんですよ。つまり日本はそのときに、じゃあうちの国では、その濃縮ウランを全部供給できませんから、アメリカにお願いしますね、となるわけ。そしたらアメリカから濃縮ウランがトルコに輸出されるわけ。こういったビジネス協定なんですね。日本とトルコの。原子力協定によって、アメリカも参加することができるという原子力のビジネス協定なんですよ。これが日本とトルコの間の原子力協定で可能になったこと。

 だから今後、そういうことが進むだろうし、重要なのは、アメリカはもう脱原発に向かっていて、日本も脱原発に向かっているんです。皆さん、安倍さんは脱原発じゃない、というふうに言うかもしれませんが、3・11前から比べたら、これは日本の原発はそう簡単にたくさん動かせないぞ、という状況になっているので、これは世界的に見れば脱原発の潮流になっているわけです、日本も」

中継市民「事実動いていない…」

座間宮氏「動いていないわけで。つまり、アメリカの原発の市場というのは、小さくなろうとしている。で、日本の原発市場というのは小さくなろうとしている。このときに新しい市場を開拓しなくちゃいけないわけです。市場を開拓したいと願うのは、今言った、日本の原発メーカーですね。と同時に、アメリカの濃縮ウランメーカーが、新しい市場を開拓したいなと思うわけですね。そういうところで、日本がトルコと原子力協定を結んだことは、市場を開拓したいアメリカと日本の原子力マフィアが願っていることだったわけですね。だからトルコとやった。

 私は、いろんな書物を読んでいる中で、非常に興味深い話があって、例えば、原発を導入したいトルコは、核兵器を持ちたいというような欲望も持っているわけです。日本ももともとそうでした。原発を導入するときは核兵器を持ちたいという願望があったので原子炉を導入した。トルコも原発を導入、そういう願望を持っているわけです。それは何でかというと、イラン。イランが核兵器を開発しようとしているという話がずっとありますね。ですから、それに恐怖を感じている周辺の国々も、イランに対抗して核を持ちたいという願望が政府内にあるわけです。国全体がそういうわけじゃないですよ。その政府内にそういう願望を持つ人が、一部の人がいるわけですね。

 トルコも、もちろんそういう願望を持っている人がいる。そこにつけ込んで、原発を輸出するんです。つまり、イランがそういう開発をしているということは、周りの国々に、売りだよね、という話になるわけですね。これを実際、日本の原子力に関わっている技術者たち、技術者の本の中に書かれてあったことなんです。これは、非常に僕は興味深いと思いました。単なるビジネスでもなくて、相手の「核を持ちたい」という願望につけ込んで原発を輸出すると。これもう、トルコに原発を輸出することの背景にもちろんあると思います。その周りのサウジアラビアにもあると思います。サウジアラビアもそういう協定を結び、原発を導入するという話になっていますから。そういったことの中に、そういったものがあると。

 で、やっぱり僕は、日米原子力協定をずっと調べた人間としては、この日本とトルコの間の原子力協定というのは、今話したように、そもそも日本とアメリカの間の原子力協定がなければ、何の機能もない協定なわけです。日本とアメリカの間の原子力協定があることによって、今回、日本とトルコの間の原子力協定を結ぶという流れになっている。もちろん日本にある技術はほとんどアメリカ、フランスですからね。そういったことを解き明かす、考えると、2018年の日米原子力協定というものの延長問題というものが、どれだけ大事な問題なのかということが皆さん分かると思います。

 今の日米原子力協定というのは、1988年に結ばれたものです。およそ約26年ぐらい前。で、この協定は1988年の6年前から交渉に入っていました。6年間かけて、この1988年に原子力協定が結ばれたわけですが、次、延長問題が2018年ですね。ということはすでに今、外務省は協定の延長交渉に入っている、それぐらいの期間です。あと4年しかないですからね、というふうに見てください。そのために今、何をするのか、何をしたらこの日米原子力協定が、これまでと同じように延長できるのかということを、外務省は一生懸命考えていると思うんです。

 トルコに原発を輸出するということは、今言ったようにアメリカの利益を生み出すことなんですね。ご機嫌取りでもあるわけです。日本の利権を持っている人にも喜ばしいことでもあるんですけど。つまり、日本がトルコに原発を輸出することは、アメリカの利権者にとっては喜ばしいことになるということを頭に入れてください。これは必ず2018年の日米原子力協定に大きく関わってくることです。日本の原子力がどうなるのかというのは、本当に、この2018年の日米原子力協定延長問題に大きく関わってきます。これは本当に関わってきます。で、韓国も今、アメリカと原子力協定の延長問題について話し合っています。その中で再処理というものをアメリカに認めさせようと頑張っているんですが、認めさせることは多分できないでしょう」

中継市民「アメリカが再処理を受けるということですか? 再処理…」

座間宮「韓国が再処理を受ける」

中継市民「韓国。ほう」

座間宮「韓国も再処理をして、プルトニウムを作りたいんですね。それは何でかというと、北朝鮮が核を持っているから。さっきのトルコとイランの関係と同じですね。北朝鮮と韓国の関係。トルコも核兵器を持ちたいんで、「プルトニウムを作りたい」って言っているんですけど、アメリカに「ノーだ」と言われている。今そういうふうにして、極東のプルトニウム事情というのがあって、オバマは極東のプルトニウムの量を減らしたいと願っているわけです。ですから、韓国に再処理も認めさせないし、日本にアメリカが貸与していたプルトニウムも返せと言った。つまり、この極東をなるべくトラブルにしたくないんです。アメリカの意向は。

 であるならば、2018年の日米原子力協定の延長問題で、日本がアメリカから認められてきた再処理がどうなるのか。これは、日本の原子力ピラミッド全体がビビリにビビリまくっていると思います。何とかして再処理を認めさせてもらいたい(と思っているはず)。これがなければ、日本の原子力ビジネスというのは全て崩壊しますから。六ヶ所(村の再処理施設)は全部閉鎖、もんじゅも閉鎖、プルサーマル原発も閉鎖、そういうふうになっていきますので、何とかしてこれ(再処理を認めさせること)をやりたい(と思っているはず)。

 日本の原子力ピラミッドの頂点には、先ほども言いましたけど、日本とアメリカの原子力協定の交渉のリーダーである外務省。この外務省が一番頑張っていると思います、協定の延長に向けて。この外務省が、日本の原子力ピラミッドの頂点であるということを皆さん認識してください。その下に、いろんな企業なり政治家なりがぶら下がっているわけですね。だから今後の、2018年の日米原子力協定延長問題が本当に日本の原子力ビジネス、原発問題にとって大きな転換点になる。これは先ほども言いましたけど、ある財団の人もそう思っています。

 世界的に見て、日本の原発がどうなるのかというのは、もちろん伊方とか今回の川内原発再稼働問題も大きいですけど、大きな外交問題として見た場合、この2018年の日米原子力協定問題、絶対にメディアは大きくしません。が、これで、大きく変わります。このままいくのか、どうなるのか。そういうことを皆さん念頭において、必ず頭の念頭において、脱原発運動をしていただきたいし、反原発なり何なり、新聞を読むときにも、必ずそれを念頭において、プルトニウム問題、六ヶ所問題を見ていくといいと思います」

中継市民「そのためには、安定的に日本の原発が、いくつかは動いていてほしいと、やっぱり考えますよね?」

座間宮「誰がですか?」

中継市民「それを売りたい原子力産業は」

座間宮「日本のですか?」

中継市民「はい。日本のですね」

座間宮「まぁ、そうですね」

中継市民「売りたい以上は、やっぱり日本のものを活用されていく必要性というのは…」

座間宮「あぁ、トルコにですか? もちろん、そうでしょうね。もちろんそうでしょうし、技術継承の話はもちろんあると思うんですよね。ま、川内原発の再稼働問題に関して、そういう外交的な視点で見ると、川内原発というのはプルサーマルではないはずなんです、確か、僕の記憶では。単なる原発。単なる原発といえば悪いですけど、アメリカ製の原発。これが動くか動かないかというのは、どういう問題があるのかというと、国際問題ではないんです。九州電力の経営問題であるし、一部の、経済の利権者の問題であるし、実はそれぐらいの問題なんです。だけど、もちろん住んでいる人の危険性の問題もありますよ。外交的な目線で見ると、特に大事なのはプルサーマル原発です」

中継市民「高浜とか」

座間宮「高浜。まさに高浜。伊方もそうですね。このプルサーマル原発が、どれだけ政府が無理やり動かそうとするのかということを、必ず注目してください。絶対に彼らはこれを動かしたいはずです。というのも、プルサーマルを動かさないと、持っているプルトニウムの、持っている理由というものの言い訳ができないんです。プルサーマルが動かないままでプルトニウムを保有しているということは、これを何かしらよくないことに使うんじゃないかという外交問題になりますので、外交的な視点で見ると、プルサーマルがいくつ動くのか、これは世界が注目してますよね。本当に、世界は皮肉なことに、プルサーマルを動かせ、と言っているわけです。これはほとんど報じられませんけど」

中継市民「その辺を念頭に見る…」

座間宮「はい。見ていてくださいね」

【IWJテキストスタッフ・久保元】

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2014/07/26 【青森】「政府の間違った判断が、悲劇を生んだ」 ~「青森空襲展」にて青森空襲を記録する会 今村修氏インタビュー

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 2014年7月26日10時過ぎより、青森市の中央市民センターで行われている「青森空襲展」を、「青森空襲を記録する会」会長の今村修氏の案内で巡り、当時の様子や記録する会の活動内容などについて聞いた。終戦間近の7月28日に、市街地のおよそ90%を焼いた青森空襲では、空襲を恐れて郊外に避難・疎開をしていた住民を『防空法』を根拠に呼び戻したことによって、1000名以上の犠牲者を生んだ。「青森空襲展」は、空襲から69年となる7月28日まで開催された。

  • 記事目次
  • 戦争の記憶を風化させないために
  • 「防空法」が招いた多くの民間人の被害
  • 勇ましいことばかりが語られる、今

■Ustream録画(再配信映像 55分間)

  • 解説 今村修氏(青森空襲を記録する会会長)

戦争の記憶を風化させないために

 「青森空襲を記録する会」は、空襲の記憶の風化を防ごうと、34年前に発足した。空襲前後の写真や、当時の生活の様子などを展示し、空襲体験者による語り伝えを行う活動を行っている。これまでに、体験者に話を聞いて記録誌を作ることや、市内の小学校などから依頼を受けて話をすること、展示を訪ねてくる学校の生徒たちへの説明を続けてきた。しかし、体験者の高齢化により、語る人が少なくなってきたこともあり、「今後、どのようにして若い世代に語り継いでいくかが課題である」と今村氏は話した。

「防空法」が招いた多くの民間人の被害

 太平洋戦争の終盤、「ポツダム宣言」が出されたのが6月27日、日本政府が「ポツダム宣言の拒否」を回答したのが7月27日、青森空襲は、その翌日の7月28日に行われた。当時、空襲を恐れて多くの民間人が郊外に避難・疎開をしていたが、市街地の爆撃による火災は民間人が消火することと定めた「防空法」により、避難・疎開者は非国民であるとされ、配給が止められることとなった。当時は、食料も着物もすべて配給制だったため、生きるためにと、多くの人が市街地に戻って来た。呼び寄せられて、真面目に戻って来た市民が一家で全滅してしまうなど、記録上では1700名という多くの市民が犠牲となった。

 青森は、硫黄島が3月に陥落した後、初めて攻撃された地方都市である。日本政府は、青森空襲の2週間後に「ポツダム宣言の受諾」をする。その2週間の間は、B29の攻撃は激しさを増し、各地に焼夷弾が降り注いだ。

 青森空襲で使用された焼夷弾は、ナパーム弾であり、火薬の他に樹脂やリンが使われ、弾頭には日本家屋の屋根を突き破れるように、30キロ近い重りがつけられていた。アメリカ側に多くの資料が残されていることからも、新型兵器の実験的な意味合いがあったことが伺える。

 今村氏は「日本政府が、ポツダム宣言を最初から受諾していれば、青森空襲は避けられた。時の政府の間違った判断が、多くの避けられた悲劇を生んだことを考えると残念でならない」と語った。

勇ましいことばかりが語られる、今

 終戦直後、米軍が上陸することになった時、日本人は「中国大陸で自分たちがやってきたのと同じことをされる」と考えた、と今村氏は話す。そのため、青森でも女性は顔を黒く塗り、男装をして、「山へ逃げなさい」と言われたという。しかし、アメリカ軍が組織的に略奪行為などを行うことはなく、今村氏は「それは、驚きでもあった」と振り返った。

 その上で、今村氏は「今は、勇ましいことばかりが聞こえてくる。廃墟になってしまった日本に立った、当時の人たちが何を考えたか。それは『平和の大切さ』です。戦争というのは、遠いどこかの国に出かけて行って、武器で戦うというようなことではない。武器を持たない人たちが家を焼かれ、殺され、町中がなくなってしまった。そういう経験をしてきた日本人は、過去に学ばないといけない。同じ過ちを繰り返してはならない」と力を込めて語った。【IWJテキストスタッフ・荒瀬】

■関連記事(青森空襲体験者の証言)

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2014/08/15 千鳥ヶ淵戦没者墓苑献花者の様々な思い 「日本は不戦の国であるように」

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140815_千鳥ヶ淵墓苑での国会議員らの献花

特集 戦争の代償と歴史認識

 敗戦から69年目を迎えた8月15日。太平洋戦争中、海外で死亡した日本人のうち、身元不詳で遺骨の引き取り手がない戦没者の霊を慰めるための千鳥ヶ淵戦没者墓苑で、献花が行われた。

 安倍総理はこの日、午前中に千鳥ヶ淵戦没者墓苑を訪れ、献花を行った。献花場所にいた報道陣の前に、複数の護衛の人間と姿を表した安倍総理は、係の者から花束を受け取り、献花。記者からの質問には答えず、無言のまま千鳥ヶ淵戦没者墓苑を去った。この間、わずか2分にも満たなかったという。

  • 記事目次
  • 集団的自衛権、「行使しなくてはいけないのかな」
  • 50年間、毎年献花にきている夫婦「日本は不戦の国であるように」
  • 「悪い時代だった。『今日も学校に行けるのは、兵隊さんのお陰です』なんてさ」

■千鳥ヶ淵墓苑での国会議員らの献花

■千鳥ヶ淵墓苑献花者インタビュー

  • 日時 8月15日(金)13:00〜
  • 場所 千鳥ヶ淵戦没者墓苑(東京都千代田区三番町)

 IWJは千鳥ヶ淵戦没者墓苑を訪れた方々に対しインタビューを行い、献花をした際の胸の内を聞いた。

集団的自衛権、「行使しなくてはいけないのかな」

 埼玉県川口市から訪れた63歳の男性は、「先の戦敗があり、現在の我々があるという気持ちできました。戦争はやむをえず始まったと思うが、現代では、戦争はさせません」と語った。

 一方で、「集団的自衛権の行使容認の閣議決定は世の流れ。色々な賛否両論はありますが、行使しなくてはいけないのかな、と。行使容認は苦渋の決断かな、と思います」と述べ、「こちらから行く必要はないが、同盟国としてアメリカが守ってくれるのに、自分たちは守らないというのはおかしい」と話した。

50年間、毎年献花にきている夫婦「日本は不戦の国であるように」

 夫婦で訪れた81歳の男性は、「小学6年生の時に、福島県の二本松から4キロ離れた温泉町へ、集団疎開した。その後、自分の家族が半年後に郡山に来て合流し、そこで終戦を迎えた」と、69年前のこの日を振り返る。

 「私は集団疎開をギリギリまでしなかった。市ヶ谷の庭で焼夷弾がバラバラと落ちるのを、防空壕に入らずにみていました。空が真っ赤に染まっていました。すぐ手前の家まで焼け、ようやく集団疎開に行きました。戦争の惨めなところは、見たり、聞いたり、実体験しています」

 そう戦争体験を振り返り、「日本は不戦の国であるように」と祈るように語った。安倍政権が進めようとしている集団的自衛権の行使については、「安倍総理には、あまり憲法をいじってほしくないという気持ちです」と訴えた。

 幼少期に終戦を迎えた奥さんは、当時の様子を「私は、防空壕の中でぎゃあぎゃあ泣いていたみたい」と説明した。

 女性は、桜の木を見ると、戦死した兵隊の顔が重なる、という。

 「桜の木が兵隊さんの顔に見えて、胸がいっぱいになり、手を合わせているの」と述べ、「これからずっと平和で戦争のない世界に」と願いを込めた。

「悪い時代だった。『今日も学校に行けるのは、兵隊さんのお陰です』なんてさ」

 「敗戦から69年間、平和が続いている。いつまでも続けていきたい」――

 こう語った80歳の男性は、「我々の子どもの頃は悪い時代だった。『今日も学校に行けるのは、兵隊さんのお陰です』なんてさ。やっぱり悪い時代だったんだよ」と、戦中を振り返った。

 また、「外交は戦争ではない方法でできる。話し合いだと難しいというけど、それは知恵の使い方だよね」と語り、反戦争を訴えた。さらに男性は、自身の戦争体験を紹介した。

 「私は先祖代々東京で、田舎がないから、戦時中はずいぶん困った。結局、知り合いの兵隊さんの納屋へ疎開しました。天皇陛下の終戦を伝えるお言葉があり、親父はすぐに『戦争、終わった! 』と言い、東京へ帰りました。3月10日の大空襲では、私のいとこが亡くなりました」

 男性は、「ああいうことは、2度とあっちゃいけない」と力を込めて語り、「憲法は『看板』みたいなものだから、壊しちゃいけない。69年間、こうやって戦争をしないできたんだから。日本は平和でもって世界のお手本でなるようでなければいけないんです」と、護憲の大切さを訴えた。(IWJ 原佑介 芹沢あんず)

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2014/08/15 敗戦から69年 靖国神社参拝客に聞く 20代若者、戦争体験者、遺族の方…それぞれの思い

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特集 戦争の代償と歴史認識

 敗戦から69年目を迎えた8月15日、靖国神社には多くの参拝客が訪れた。千鳥ヶ淵墓苑へ献花した安倍総理は、靖国神社への参拝は行わず、代理を通じて神社に私費で玉串料を奉納した。

 閣僚からは、新藤義孝総務相、古屋圭司国家公安委員長、稲田朋美行政改革担当相の3人が参拝。国会議員では他にも、超党派の議員連盟「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」(会長・尾辻秀久自民党参院議員)の84人も参拝した。

 IWJはこの日、「参拝する会」による記者会見を中継した他、靖国神社を訪れた一般の参拝客にインタビューし、それぞれの戦争に関する胸のうちを聞いた。

  • 記事目次
  • 集団的自衛権行使の是非は様々 戦争体験者の声
  • 若者の戦争への思い
  • 「8月15日は、霊を弔う静かな日であって欲しい」と遺族
  • 自民党尾辻議員「心静かに感謝の誠をささげた」
  • 安倍首相参拝せずは「総理の判断」
  • 海外での自衛隊殉職「ないと信じている」

■参拝者インタビュー

■「みんなで靖國神社に参拝する国会議員の会」記者会見

■「みんなで靖國神社に参拝する国会議員の会」昇殿参拝

■靖国神社紹介レポート

  • 日時 2014年8月15日(金)11:30〜
  • 場所 靖国神社敷地外周辺(東京都千代田区九段北)

集団的自衛権行使の是非は様々 戦争体験者の声

 戦時中、2人の兄をルソン島と中国で亡くしたという79歳の女性は、靖国神社への参拝を毎年欠かさないという。

 女性は、「(兄の)お骨が返ってこなかったことが、可哀想」と涙ぐみ、「戦争体験者として、戦争の悲惨さはもう見たくないです」と訴える。

 「親が可哀想です。子どもを亡くした親というのは、なかなか癒えないと思います。自分は兄弟で一番年上なので、両親はもういませんが、参拝へ来ています。戦争は2度とやってもらいたくありません。小さい時の経験もあまりいいものではないです。この歳になると難しいことは分かりませんが、安倍総理は戦争に反対してほしいです」

 小学3年生のときに終戦を迎えた77歳の男性は、「集団的自衛権は非常に結構なことです」と語り、行使容認の閣議決定を支持する考えを述べた。加えて、「集団的自衛権の内容は、まだ物足りなく感じます。現場の判断に任せると、現場の対応が遅れるのではないかと懸念しています」と話した。

 「現在の日本は無関心な世代が多いと思います。ただ、『平和、平和』と言うだけではなく、平和のためには何をすれば良いのか。それを安倍さんは考えている」

 友人同士で参拝に訪れた男女のグループは、「今、戦争になったら科学の力で地球が絶滅してしまいます。戦争だけはしてはいけません。今後、もし日本で戦争が起きても、戦争には参加できません」と訴えた。

 さらに、「今後、おそらく日本は、戦争になる前に解決すると思うので、戦争を行うことはないと思います。武器の怖さを皆さん分かっていますし、広島や長崎に落ちた原爆の怖さも分かっています。福島の原発事故からも分かるように、科学の時代になっています」と語った。

 インタビューに対し、「日本は間違っている! 」と、声を荒げる男性も。男性は、「戦争で罪のない善良な市民が数多く亡くなっています。日本は過去の歴史に学び、今後、戦争をするべきではありません」と断言する。

 集団的自衛権行使の閣議決定に触れ、「第2次大戦後、米国が日本に入ってきたということで、日本は米国をとても恨んだ歴史があります。なので、他国で戦うなんてありえないです。現行の憲法は、戦争をやらないと宣言しています。そして、今までの69年間戦争をしないできました。今後も戦争をやるべきではありません」と主張した。

 また、「日本は1192年の鎌倉時代から、大政奉還まで、多くの戦をしてきました。たった一人の大名を決めるために、どれだけ多くの人が血を流してきたか。戦というのは、大変な損害。武将の命はもちろん、一族郎党の命が取られ、土地が取られます。トップには、責任があります」と戦争の歴史を振り返り、安倍総理の責任の重大さと、反戦を強く訴えた。

若者の戦争への思い

 一人で参拝に訪れていた26歳の男性は、「戦争は、やらない方が良いですけど、攻められてきて、国民の命や財産を奪われそうになるならば、武器を取る必要がある。でなければ、奪われてしまいますから」と、自衛戦争の必要性を語った。

 「(戦地となる外国に)日本の国民がいたり、日本にとって国益があるならば行くべき。日本にとって国益がないならば、行くのはちょっと、どうかと思いますけど」

 大学の学習の一環で靖国神社を見学にきた21歳の女性と20歳の男性にも話を聞いた。

 女性は、「8月15日は、平和がきた日と思っていたので、これまで天皇陛下については考えていませんでした。なので、自分とは違う考えを持っている人がいるということを知れてよかったです」と感想を口にした。

 また、「女性は、直接戦争に行くことはないと思うけど、愛する人を失うことにはなります。戦争は悲しみや憎しみしか生まないと思うので、私は戦争反対です」と、戦争反対を明確に訴えた。

 一方、男性は、「もし、集団的自衛権で、再び戦争の傘下に巻き込まれることになるなら、この靖国神社の存在意義が失われると思います。靖国神社は、英霊を祀っている。ここは、戦争の悲劇を起こさないための象徴だと思っている」との見解を提示する。

 「私たちが平和を享受できているのは、英霊たちの命の犠牲よるものだと、靖国神社を見て、実感している。それをどのように政治、生活に反映していくかというのを考えるのは、20歳になり、参政権も持ったので、自分たち国民としての義務だと考えます」

 最後に男性は、「武力で解決するのは、必ずしも望ましい道ではないと思うので、戦争は反対です」と強調した。

「8月15日は、霊を弔う静かな日であって欲しい」と遺族

 「父親が憲兵で、捕虜として最後の引き上げ船で帰還した」と話す女性は、日本が敗戦したこの日について、「今日は戦争が終わった日。戦友のために参拝する、そういう静かな日であって欲しいと思います」と祈るように述べた。

 「毎年、父は戦友のために、靖国神社や友達のお墓に行っていました。父が十数年前に亡くなったので、私は代わりにきています。捕虜なので、ソ連に行き、憲兵隊という罪の重い仕事をされたみたいで。父は、骨と皮になって帰ってきました。父が毎年参拝にくる理由には、『お前が先に死んだら俺がお参りをしに行くよ』というような、戦友同士の約束があったみたい」

 また、「私は、8月15日に、靖国神社で年老いた人たちを見たら、戦友仲間できているのかなと思います。外の方で、ごちゃごちゃいろんな演説をしているような方もいる。しかし、今日は演説を行うような日ではなくて、戦争を後の人に伝えるために話を聞く、語らいの日なのではないかと思います」と話し、最後に、「戦争は好きではない、悪いこと」と語った。(IWJ・原佑介、IWJ・芹沢あんず)

自民党尾辻議員「心静かに感謝の誠をささげた」

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2014/07/21 パレスチナで支援活動を続ける、JVC今野泰三さんインタビュー【前編】 〜2年ごとの攻撃、イスラエル政府の狙いとは?(聞き手:ぎぎまき)

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特集 中東

 イスラエルがガザ空爆を開始したのは、奇しくも日本では七夕にあたる7月7日。あれからすでに、2週間が経とうとしている。

 15日には約200人だったパレスチナ人の死者の数は、イスラエル軍が地上侵攻を始めたことで、19日現在、300人を越え、その数は激増した。イスラエル側の民間人の死者は2人、兵士の死亡者数も増え続け、軍が手を緩める気配はない。これ以上、被害が拡大しないよう一日も早い停戦を願うばかりだが、解決策はどこにあるのか。

 7月18日、イスラエルの大学で政治学を学び、2年前からパレスチナ現地で支援活動を続けている、日本国際ボランティアセンター(JVC)の今野泰三さんに、ニュースからは伝わってこない、普段のパレスチナ人とイスラエル人の素顔についてうかがった。前編では、中東問題に興味を持ったきっかけから、今野さんが知るガザの日常とイスラエル社会についてお伝えする。

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【岩上安身のニュースのトリセツ】イスラエル>アメリカ>日本、倒錯した偏愛の同盟 ~「価値観を共有する」 虐殺に加担する日本

  • 記事目次
  • 汚染された水を飲んで命をつなぐガザの人々
  • 世界はガザの暮らしを想像することはできない
  • イスラエル政府とイスラエル社会
  • 反ユダヤ主義とヨーロッパの責任

Q. 日本国際ボランティアセンター(JVC)とはどんな活動をしているNGO団体ですか

▲日本国際ボランティアセンター(JVC)、パレスチナ現地代表の今野泰三さん。インタビューを行なったのは7月18日。今野さんは3日前に帰国したばかり

 1980年、当時カンボジアからタイの国境に難民が押し寄せていて、彼らを支援しようと集まったボランティアが作ったネットワークが元々の始まりです。カンボジアから逃れてくる難民をいくら助けても、そもそも何で難民になるのかが分からないと問題の解決にはならないと考え、当時、日本政府は反対していましたが、難民たちが暮らしていた農村に入り、根本的な問題解決に取り組み始めました。

Q. 今野さんがJVCに努めることになったきっかけは

 大学生の頃に、バックパッカーとしてパレスチナ、イスラエル、レバノン、シリアを訪ねていた年に9.11同時多発テロが起きました。ニュースで報道されている中東のイメージと自分が見てきた中東のイメージがあまりにもかけ離れていたことに驚き、中東問題に興味を持ちました。

 2007年にイスラエルのヘブライ大学に留学する機会を得て、2年弱留学し、ヘブライ語、アラビア語とイスラエル政治を勉強しました。

 パレスチナにNGOスタッフとして駐在し、働き始めたのは2年前の6月です。それから現在に至るまで、パレスチナ担当として現地代表を努めています。イスラエルがガザを空爆した今月7日は、ちょうどJVCのエルサレム事務所にいて、ガザに入る許可証を申請している最中でした。その間に空爆が始まったので、今回はガザには入れず、現地の友人や同僚に状況を聞いていました。

汚染された水を飲んで命をつなぐガザの人々

Q. ガザの人たちからはどんな話を聞いていましたか

 「怖い、本当に怖い」と。イスラエル軍がどこでも構わず攻撃してくると。自分が住んでいるのは町の中心部だから周辺部よりは安全だが、周辺部に住む親族や兄弟の地域は、今回の攻撃で4、5回攻撃されている。親族が2家族殺されて、いとこの女性と、女性の息子と娘が殺されたと言っていました。もう1つの家族は自宅にいたところを6人家族全員、家ごと爆破されたそうです。

 ガザは23区より狭い面積に180万人のパレスチナ人が住む、人口密集地帯です。停電が続き、1日8時間しか電気が通ってないことから、下水施設が稼働せず、水道水が汚染されている。それでも、外に出て水を買いに行くのも危ないので、仕方なくその水を飲まないと行けないと言っていました。

Q. 今回の空爆は、イスラエルの3人の入植者が行方不明になったことが発端だと言われています。その事件について教えて下さい

 パレスチナのヨルダン川西岸(以下、西岸)には、国際法に違反する形でイスラエル人入植者が60万人近く暮らしています。今回は3人の男子生徒がヘブロン近郊にある入植地の学校からヒッチハイクで帰る途中、行方不明になりました。

 イスラエル軍は捜索活動と呼ばれるものを展開しましたが、実際にやっていたことと言うのは、夜中に突然家に入り、バスタブやベッドを倒し、何百人ものパレスチナ人を裁判なしで連れていき、要するに誘拐して、監禁しました。その人たちが事件に関わっているかもどうかも分かりません。そもそも、それは問題にもされません。それに対して、パレスチナ人の青年たちが投石して抵抗し、軍はゴム弾や手榴弾を使って鎮圧しました。何人も死者、負傷者が出ました。

Q. 軍のこうした強行的なやり方は、イスラエルでは報道されていたのですか

 報道されていました。個人的に、イスラエルのメディアはそこまで酷いとは思っていません。右派の新聞もあれば左派の新聞もある。報道の自由はある程度保たれています。左派の中には軍の強引なやり方に反対する人たちや、そもそも入植地に住んでいる人たちが悪いという意見もありました。

※【ハアレツ紙】A crisis explained: The kidnapping that sparked the latest round in the Israeli-Palestinian conflict

Q. なぜ刑事事件として扱わず、軍が介入するのでしょう

 占領下であるから、というのはあります。軍が好きな時に入って、好きなようにできるのは、過去40年間のパレスチナの西岸とガザの現状です。それは根本的に変わっていません。その延長線上で今回の強引なやり方も起きたと思います。イスラエル政府は、3人が行方不明になった時点で、これは政治的目的による誘拐なんだと、しかもハマースがやったんだと決めつけましたが、未だにその証拠は出てきていません。犯人も逮捕されたのか、暗殺されたのか分からないまま、犯人の家とされた2軒が爆破されて、それでなんとなく終わってしまっている。

 法律で云々、証拠はこうで、この人たちが犯人ですという裁判は全く行なわれないまま、今に至っています。

Q. 3人の遺体が見つかってから、イスラエル右派の市民が、報復としてパレスチナ人の男の子を生きたまま焼き殺すという事件も起きました

 これについて、イスラエル政府は殺人事件として扱っています。そのうち6人がこれまでに捕まって3人が現在裁判にかけられています。

Q. しかし、これだけでは終わらない。なぜ、イスラエル政府はガザを空爆したのでしょうか

 今回、イスラエル政府は欧米社会に対し、イスラエル国民が誘拐されたのに、なぜ声をあげないんだという圧力を相当かけていたみたいで、それで結局、欧米社会が折れて、一方的に誘拐事件だけを扱って非難するということになりました。西岸で死者や逮捕者が出たり、家がぶっ壊されたりしたことについては欧米社会は黙って見ていました。

 イスラエルが「安全保障上、必要」と言うと、それですべてが許されてしまう。ヨーロッパでも、国によって対応は違いますが、ドイツはホロコーストの歴史があり、イスラエルに厳しいことを言うのは避けています。他の国も少なからず、言い過ぎれば、逆に「反ユダヤ主義」と言われてしまう可能性があるということと、アメリカが親イスラエルなので、アメリカ寄りのヨーロッパの国々は気を使って、悪いことは言わない、という両方の側面があるのではないでしょうか。

世界はガザの暮らしを想像することはできない

パレスチナ周辺地図―著作者:現代企画室『占領ノート』編集班/遠山なぎ/パレスチナ情報センター"

Q. ガザと西岸における、普段の生活とはどんなものですか

 東エルサレムの人たちはイスラエルに併合されてしまっているので、ある意味どこにも行ける。西岸にもいけるし、イスラエル側にも行けます。仕事も西岸でもできるし、イスラエル側でもできるので、イスラエルに比べると経済レベルは低く、住宅建設の厳しい制限や分離壁による社会的・文化的な疲弊も深刻ですが、それでも経済的には西岸やガザよりも全然いい。

 その次に、西岸には国際援助が入ってきているので、入植地や分離壁によって一方的に土地が奪われ、占領による精神的プレッシャーはとても大きいですが、それでもそれなりに生活はできています。ガザに関しては完全に封鎖されて7年が経ちます。ガソリンもほとんど入ってこない、物資も入ってこない、そもそも働く場所もない。農業が重要な産業でしたが、イスラエルは建設した壁から内側にさらに2km、ガザの人々の立ち入りを禁止しました。そこに農地があるので、今は使えなくなっています。面積率で言うと約30%、さらに狭くなったことになります。

Q. 何を根拠に境界線を移動させたのですか

 安全保障が目的という主張ですね。つまり、テロリストがやってくるから、自分の国の安全を守るためだと。でも、立ち入り禁止区域を一方的にガザの中に作るというのは、ガザをもはや占領していないというイスラエルの主張とは矛盾するようにも思います。

 1993年のオスロ合意にまで話は戻ります。オスロ合意は交わされましたが、ハマースや、イスラミック・ジハードと呼ばれる勢力がこれに反対しました。その理由は、国際法で保証されたパレスチナ難民の権利のほか、違法な入植地やイスラエルが一方的に併合した東エルサレムに関する交渉を全て棚上げにし、占領の終結をもたらさない合意内容だったからです。反対勢力は、イスラエル人やパレスチナ自治政府を攻撃するようになりました。その対抗手段として、イスラエルはガザを封鎖し始めました。当時から、封鎖はすでに始まっていたんです。

 ガザから、一日何十万人という労働者がイスラエル側に行っていたので、その人たちが入れないようにしようと、検問所を作り、イスラエルはガザを切り離した。そこから段々、切り離しが強化されていき、ガザや西岸からの自爆攻撃が激化したこともあり、2002年に壁の建設が始まりました。

 なお、西岸内での分離壁の建設は国際法違反であり、建設された壁は全て撤去されなければならないと、ちょうど10年前に国際司法裁判所が意見勧告を出しました。

▲ガザ地区からの人の出入域を管理するエレズ検問所と、ガザ側のパレスチナ自治政府検問所をつなぐ、イスラエル軍による一方的な「緩衝地帯(Buffer zone)」に設置された通路。2013年11月20日―写真:今野泰三

Q. ガザの暮らしは今野さんの目にどう映りましたか

 ガザの人たちの暮らしは、何もないです。仕事もない、食料もない、希望もない、水もない。人間がこういう状況で生きていたらどうなってしまうのか…。日本人はもちろん、世界の多くの人には想像はできないと思います。もちろん、それでも笑顔はあります。

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Q. ガザに住む人たちの顔をしっている今野さんですが、イスラエル軍による地上侵攻も始まりましたが、今、どういう思いを抱いていますか

 自分の知り合い、同僚、友人が、誰がいつ殺されるか分からない。ニュースを見る度に、名前を確認します。苗字を見れば、誰々の親族ということが分かる。自分の問題として身近に感じるということです。

 死者のうち、民間人が7〜8割を占めます。イスラエル軍は「逃げろ」といいますが、ガザには逃げ場がありません。誰がいつ殺されるか分からない。そういう恐怖の中で、実際にそこで一緒に働いてきた人たち、ボランティアでいいから、一生懸命ガザを変えていきたいという思いでがんばって来た人たちが、本人が悪いかどうか関係なく、無差別に恐怖のどん底に落とされている状況は、本当に見ていて辛いです。

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イスラエル政府とイスラエル社会

Q. 今野さんは、イスラエル政府の真の目的は何だと思いますか。中にはパレスチナ人がいなくなるまで虐殺するのがイスラエルの目的だとする、極端な見方も存在しています

 イスラエル政府が、パレスチナ人を皆殺しにしようとしているとは私は思えません。そういう意見はあまりにも歴史を知らないというか。イスラエル側がパレスチナ人を非人間化しているという指摘はありますが、イスラエル人だってパレスチナ人を殺したくて殺しているわけではないと、私は思います。自分たちが悪いことをしていると思っている人たちもいれば、反対している人もいる。イスラエル政府もそんなことをしたら世界中から非難を受けて自分たちの国の存続が危うくなるということは十分、分かっているはずです。

 イスラエルを批判する人たちの中には、イスラエルが巨大な国だというイメージを持っている人がいるようですが、たかだか、人口800万人で、その内ユダヤ人口は600万人、アメリカ、ヨーロッパや日本と比べたら本当に小さな国です。そういう国がそういうことをしてしまったら、後がないんですよ。今、欧米、特にアメリカの支援があってこそ、かろうじて成立している国ですから、そんなことをしてしまったら行くことがないというか、自ら自分の首を占めるだけなので、皆殺しにしようとかは考えてないと思います。

 ただ、常にパレスチナ人を追い出そうという政策を政府や軍が取ってきたことは、証拠として書かれています。建国前からずっと今に至るまで政策としてやってきたし、そういう発言もしてきました。

 西岸の場合は、右派が、自分たちが祖先から受け取った場所である、それを譲るわけには行かない、だからできれば併合したいけど、併合すると、そこに住んでいる住民に市民権を与えないといけない、市民権をあげてしまうと自分たちがマイノリティであって、民主的という論理が破綻してしまう。土地もあきらめたくない、市民権もあげたくない、一つの解決策としてパレスチナ人を追い出そうという声も常に出てきているという事実はある。

Q. イスラエル政府は、ガザを徹底的に攻撃してハマースを降伏させるのが目的なのでしょうか

 数年間黙ってくれていたらいいという考えだと思います。10年、20年先は見てない。ガザに関しては、4年前に約1500人が殺され、2年前には約170人が殺され、今は約230人くらいがすでに殺されています。2年に1回のペースで起っているんですよ。だから、2〜3年大人しくしてくれていたらとりあえずいい、という感じの作戦でしかなくて、長期的に問題を解決しようというのではおそらくないと思います。

Q. 先日、イスラエルの極右議員が「パレスチナの母親は皆殺しにすべき」という発言をしたと報道されました

 今、イスラエル政府は右派の連立政権ですけど、右派の人たちはそういう発言はちょこちょこしますよね。「ガザが海に沈んでしまえばいい」と発言した議員もいました。ガザはなかったことにしたいんだと思いますよ。常に、自分たちのいる国に戻りたいと要求してくるわけですよ。切り離して自分たちの問題にしたくない、という本音はあるのでしょう。

 「ガザからは入植地も軍も撤収した。占領もしてないのに、なんで攻撃してくるのか意味がわからない」、というのがイスラエル人の本音なのではないでしょうか。多くの市民はガザに行ったこともないので、一般市民とハマースの区別も難しい、ガザの状況を知らないと思います。

Q. 空爆を開始してからイスラエルの一般市民は、ガザの現状を理解していると思いますか

 今、ちょうどヘブライ語のニュースを読んでいますけど、ガザの中が今どうなっているか、報道を控えているような印象もあります。知ってしまうと、世論が変わってしまうかもしれない。自分たちの権利、正当性に関わってくる問題なので、読者も触れたくないのでは。

Q. もし正確に知っていたら、イスラエルの世論は変わるでしょうか

 基本的に「選択肢がない」と思っている人が多数です。やっていることがいいと思っていないイスラエル市民は沢山いますし、入植地、占領が良くないと思っている人たちもいる。けれど、それよりも恐怖心が先行してしまうのは、ユダヤ人の歴史があって、ホロコーストの歴史があり、反ユダヤ主義の歴史がある。私が会ったイスラエル人がよく言うことですが、ガザから撤収したのに、あいつらはロケットを撃ってくる。自分たちがどんなに妥協をしようが、アラブ世界の反ユダヤ主義はなくならないし、反イスラエル感情もなくならない、そこで妥協してしまったら、自分たちの安全は危うくなるから妥協できないと。

 悪いことしているのは分かっているし、民間人と武装勢力は区別したいけれど、そういうことをしている余裕がないというか、仕方ないんだという考え方ですね。対パレスチナというよりは、対アラブ諸国。そこにイランとか、全部入ってきてしまうので。

反ユダヤ主義とヨーロッパの責任

 難しいと思うのは、実際、「イスラエル」と「ユダヤ人」とを本人たちも区別してないし、世界も区別していない人があまりにも多い。イスラエル政府とユダヤ人が同一視されていますね。イスラエル人がパレスチナ人に対して暴力をふるうと、ヨーロッパやアメリカで反ユダヤ主義が盛り上がるという、とてもいびつな状況にある。パレスチナ人よりイスラエル人を嫌いになっては駄目だと思います。反ユダヤ主義が盛り上がれば盛り上がるほど、イスラエル国内では、国の正当性が高まる。

※イスラエルによるガザ空爆後、フランス国内で高まる反ユダヤ主義ー【ibtimes】Israeli-Palestine Conflict: French Synagogues Attacked as Jews Lament Anti-Semitism Rise

 やっぱりイスラエルは必要なんだと。どんな手段を使ってもイスラエルという国がなければ、我々は全世界から同じような目にあう時に、避難所が必要になるという世論になる。そういう意味で、イスラエルを批判するのであれば、同時に、反ユダヤ主義も徹底的に批判する義務があるし、闘う義務がある。

 それをヨーロッパはちゃんとやってきてないですよね。ヨーロッパは、自分たちの反ユダヤ主義という歴史をパレスチナという土地に押し付けて、イスラエルという国を作らせて、すべては解決したと言ってしまっている。そんなわけはないだろう、と。ヨーロッパの責任は大きいと思いますよ。…【後編へ続く】

(後編はこちら

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【IWJブログ】安倍政権とイスラエルの「協力」が集団的自衛権の対象に!? ~ガザ空爆を続けるイスラエル、日本政府は過去に「武器輸出」の可能性を示唆

■岩上安身によるインタビュー関連記事

2014/07/21 パレスチナで支援活動を続ける、JVC今野泰三さんインタビュー【後編】 〜共存は可能なのか?日本の集団的自衛権が招くもの(聞き手:ぎぎまき)

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ジャバリヤ市でJVC事業の一部として、栄養失調児の検査をするパート ナー団体アルドゥ・アル・インサーン(AEI)のスタッフ(右)とボランティアをす る地元女性(左)。2014年5月20日ー写真:今野泰三

特集 中東

(前編の続き)
インタビュー前編はこちら

 7月18日、3日前に帰国したばかりという、日本国際ボランティアセンター(JVC)の今野泰三さんに、パレスチナ・イスラエル問題について話を聞いた。前編では、普段のガザの暮らしや、イスラエル市民の感情についてお伝えしたが、後編では、パレスチナとイスラエルを行き来する今野さんの目線で切り取った「ハマース」や「イスラエル兵」の姿についてお届けする。また、今野さんはまさに、安倍首相が救出の対象とした、「海外の紛争地で働くNGO職員」の一人である。インタビューは当然、日本の集団的自衛権の話にまで及んだ。

  • 記事目次
  • ハマースとパレスチナの人々
  • イスラエル兵について
  • 解決策はどこに
  • 情報戦
  • イスラエル国内の歴史教育

ハマースとパレスチナの人々

Q. ハマースについて教えて下さい。彼らはどういう存在で、パレスチナの普通の市民とはどういう関係なのでしょうか

ジャバリヤ市でJVC事業の一部として、栄養失調児の検査をするパート ナー団体アルドゥ・アル・インサーン(AEI)のスタッフ(右)とボランティアをす る地元女性(左)。2014年5月20日ー写真:今野泰三

 ハマースの正式名称は、「イスラム抵抗運動」。パレスチナ人のグループです。イラクのISISやヒズボラとは全然違う組織で、パレスチナ人の民族的な権利やムスリムであるという権利を求めていく、というのが一つ根幹にあります。

 ハマース憲章が常に問題になるのですが、そこには、「パレスチナの土地がイスラームのワクフ(寄進地)」であると書かれています。ハマースはオスロ合意にも反対していましたが、現実政治を見ていると、イスラエルはもう存在しているし、2国間でも仕方ない、と。強い国だからそれはそれで認めて、自分たちの民族的な自決権を認めてもらう、東エルサレムに関しては、自分たちの町であり首都であることを認めてもらう、西岸からの入植者は全部撤退する、グリーンラインを境界とする二国間でも仕方ないんじゃないかという人たちも、ハマースの中にちらほら出てきています。しかし、イスラエル軍は「ハマース」という理由だけで、そうした人々まで暗殺してきたのですが。

 今、ハマースが停戦の条件として挙げているのは、難民の帰還権については全然挙げていなくて、基本的にはオスロ合意の取り決めを、イスラエル側がちゃんと守れということを言っている。その内の一つは封鎖の解除、それも一方的な解除ではなく、国連と第3ヶ国が管理、監視した元での封鎖の解除です。後は港の解除。後は海も4方向封鎖されているので、5kmくらいしか自由にいけない。5kmだと漁業が全然できないので、それをもう一回戻して欲しいということですね。

Q. オスロ合意の取り決めに戻るというのは、真当な要求に聞こえますが

 民間人に向けてロケットを撃つということは戦争犯罪なので、それは認められないと思いますが、今、ハマースが要求していることの中身自体は、その大部分において、国際法に基づいた正当な要求だと思います。

 ただ、ハマース=テロリストというレッテルが世界中に貼られているので、何を言っても聞いてくれないというのが現状だと思いますね。

Q. イスラエル政府は、ハマースの要求に耳を傾ける気はあるのでしょうか

 実際は、水面下では常に会っているというか、全くコンタクトがないわけではないみたいですね。全くコミュニケーションを取らないと、誰もコントロールができなくなるので。ハマースもイスラエルも公式上はお互い認めてないが、微妙な関係にはあるようです。

 今はエジプトが介入して、ハマースのメンバーと西岸の自治政府の役人、イスラエル政府の役人で停戦交渉をしている。お互い、国民の感情が常にあるので、気を使って慎重に物事を進めないといけないというのがあって、表には出てこない話だと思います。

 その中で今、民間人がガザで殺されているので、何とか早く止めなければいけないし、止める義務がイスラエル政府にもハマースにもあると思います。

Q. ハマースのメンバーにあったことはありますか

 誰がハマースか分からないんですよ。ガザの場合は、自治政府がハマースなので、ハマースが自治政府を運営しているのですが、政府の役人や警察官の中には、ハマースのメンバーや支持者もいれば、そうではない人もいます。少なくともハマースがやっている政府に雇用されている人たちです。その中でハマースのメンバーもいれば、そうじゃない人たちもいて、そうなのかなと思う人もいればそうじゃないという人たちもいる。良く分からないというのが、実際問題。

 区別があまりつかない。彼らも区別されたくないと、なぜなら暗殺の対象になるので。だから本人たちも言いません。後、ハマースのシンパとメンバーと、政府に雇用されている人たちというのは、それぞれやっぱり立場が違う。微妙な違いがあるので難しいですね。

 一般市民でも、ハマースを支持している人もいれば、支持してない人もいる。嫌いな人もいれば、好きな人もいる。一定ではありません。ただ、ハマースに関して指摘されていることは、これまでの20年間、貧しい人たちにイスラムの価値に基いて奉仕活動をしてきた。施設を立ち上げて、老人や孤児、貧しい家庭に色々支援をしてきたし、彼らが社会に参加する場所を提供してきた。家族的なつながりを作り上げてきたという指摘もされているので、そういう意味では社会に浸透しているのではないかと思います。

 ファタハを支持している人たちや左派のPFLPとかDFLPを支持している人たちもいて、彼らは2007年以降、相当、ハマースに弾圧されてきたので、拷問にあったり、NGO団体を潰されたりしてきた。だから彼らはハマースが嫌いです。ただそれを表立って言ってしまうと、それで逮捕されて、何をされるか分からないので黙っているという状況ですね。背景は、複雑です。

Q. イスラエル国内では、ミサイル警報がなる度に市民はシェルター(防空壕)に避難していましたが、ガザにはあるのですか

 ないと思います。そもそも、建設機材やコンクリートが入ってきていないので、普通の家も建てられないんですよね。家をどうやって作っているかというと、破壊された家から廃品回収して、鉄骨を伸ばしてコンクリにして、もう一度作っている。シェルターを作る余裕はほとんどないと思います。少なくとも一般家庭には。あったらこんなに死なないと思います。

イスラエル軍について

Q. イスラエル軍は、ハマースが学校や民家に武器を隠していると主張しています。どれだけ正しい情報を持っているのでしょうか

 ある程度は持っていると思います。スパイ、協力者、「コラボレーター」と言いますが、パレスチナ人の弱みにつけこんで、イスラエル側に取り込むということはずっとしてきています。それは、金銭的なやりとりや、病気の息子がいて、病気の息子をイスラエル側で治療して欲しければ、協力しろといったように。具体的に電話がかかってきたとか、そういう話はよくパレスチナ人からも聞きます。

 でも正確に100%得ていたら、今のようにはならない。ハマースからのロケット弾が止まらないというのは、それだけ把握できてないからとも言えます。

イスラエル兵について

 イスラエルは男女、100%徴兵制です。 私が留学していた時は、兵役が終わった学生でも年に1回は予備兵として徴兵に行っていましたね。軍人は制服を着れば命令が絶対。「自分が正しいか間違っているかというのはそもそも問題にはならない。命令に従うことが大義だから」、という風に話していましたね。

 もちろん、個人的な悩みはあると思いますが、外国人とシェアできるものではないと思います。トラウマ的なものもいっぱいあって、第二次レバノン戦争に行った人はすごい経験をしたと、悪夢で寝られない、友だちが殺された、殺したとかそういう話はいっぱい聞きました。

Q. 今後、どんな展開になると思いますか

 地上侵攻が始まってしまったら、民間人がなお一掃巻き込まれます。ハマースって言っても、普段は普通の格好をして、家でお茶を飲んでいる普通の人たちなので、イスラエル兵にしたら全く区別が付かない。そういう中でどういう作戦で地上侵攻するのか分からない。そこにハマースが待ち受けているわけではないので、どうやって見つけだすのか。

 イスラエル政府はハマースを滅ぼすと言っていますが、年々、ハマースが発射する数は増え、飛距離は伸びており、本当に滅ぼせると思っているのか、私は疑問です。

Q. 「自己防衛」といいながら、それが自己防衛に繋がっていない。どこかで自分たちの首をしめる結果を招いていると考えているのでしょうか

 イスラエル軍は、ガザを占領しているのはイスラエルではなくハマースだと言ってますから、ハマースが全面的に悪い、自分たちが絶対的に正しいと思っている。だから続けるだけだ、という信念ですよね。

 もちろんイスラエル社会には、長期的な安全保障につながらないと思っている人たちはいて、違う方法で話をすべきだと言っていますけど、その意見がどの程度、影響力があるのかは今はちょっと疑問です。若い人たちの中で、反アラブ感情、人種差別に近いものも根強くなっているのも現実です。そうなると、アラブ人とはどんなに交渉しても話し合いでは解決できないんだから、武力でやるしかないという考え方が強くなる。私個人は、それがイスラエルの安全保障につながるとは、全くもって思わないですけど。

▲イスラエルの首都、テルアビブで行われていたガザ空爆と占領に反対する市民と右派との衝突/A protest against Israeli attack on Gaza, Tel Aviv, 12.7.14

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Q. イスラエルの世論は、軍や政府の決断にどれだけ影響力を持っていますか

 影響は受けていると思います、イスラエルは民主国家ですから。今は少数の右派政党をかき集めてなんとか作った右派政権で、左よりも右の言うことを聞いておかないと、ネタニエフ首相のポジションは維持できないという現実があると思います。

解決策はどこに

Q. 今野さんが考える、1日でも長く平和が続くための理想的な手段とは何でしょうか

 一つは武力は使わない。お互いに。それが理想ですが、解決策があったらとっくに解決していると思います。

Q. 今回の空爆で、イスラエルが新兵器を使っているのではないかという指摘も出ています

 ガザは武器の実験場になっている部分はあると思います。兵器、あるいは戦略の実験場ですね。都市でのゲリラ戦に対する闘い方を実践する場所として使われてしまっている部分があって、イスラエルとアメリカ軍の関係もすごく強いですし、実戦経験というのは、ヨーロッパやアメリカに売れるものなのだと思います。

 軍事の専門家ではないので分かりませんが、イスラエル軍は毎回違う戦略を使ってきます。毎回違う武器を使って、一番効果的な闘い方を常に探しているという印象は受けますね。今回も「KNOCK ON THE ROOF」と言って、小型のミサイルを打ち込んで、攻撃することを事前に知らせてから、大きいミサイルを打ち込むという戦略を取っています。それは前回はありませんでした。民間人をなるべく殺さずに、いかに、テロ組織を壊滅させるかという戦略として多分考えられていると思います。

 イスラエルが買っている武器は全部アメリカの武器なので、それを、人が実際に住んでいる場所で使える国なんて世界のどこにもありませんが、ガザの場合はそれが平気で使えてしまう。国際社会も批判はするけど本当に止めようとはしませんし。

日本の武器輸出と集団的自衛権

Q. ガザの人たちにしてみればふざけた話ですが、日本も他人事ではなく、集団的自衛権や武器輸出の話がありますね

 今回の空爆が始まってから、在テルアビブの日本大使館からは情報がなかなか入ってきませんでした。大使館の仕事は邦人を守ること、法律上も、そうなっているし、そういう意識でやっているのだとは思いますけど。電話がかかってきたときに、「ガザに行かないでください」とまず言われました。当然だと思いますが、その時ちょうど、集団的自衛権の話が出ていて、安倍首相が「紛争地で働くNGO職員の安全を守るために、集団的自衛権が必要なんだ」と話していたので、「何かあったら、自衛隊が送られるんですよね」と電話口で皮肉を言おうと思いましたが、やめました(笑)。

 もしNGO職員が巻き込まれたら、日本政府は、自衛隊を派遣してイスラエル軍から私を守ってくれるのでしょうか。あるいはハマースから私を守ってくれるのでしょうか。そんなことしないでしょう。

 まず、できないですね。私はイスラエルとパレスチナの例しかあげられないですが、一つは、イスラエル政府が、自衛隊がイスラエルの領土、領域に入ることを認めるわけがない。もし、認めるとしたら自分たちに都合がいいから認めるのであって、それは、イスラエル側に都合のいい軍隊としての機能です。

 そして、もしそれをしてしまったら、アラブ諸国からイスラエルを支援しにきた国と思われるわけです。それで、私がガザに入ったら攻撃される可能性はあるし、ガザではなくても、そのレッテルを一度貼られてしまったら、他のアラブ諸国から、「日本の軍隊はガザに侵攻した、アラブの敵である」と見なされます。イラク、シリア、エジプトにいる日本人がいつどこにいてもそういう目で見られて、危険な目にあう可能性があります。

 それで危険な目にあったらまた自衛隊を派遣するんですか?派遣したら同じことの繰り返しですよね。

 安倍政権は民主主義を盾にして、民主的に選ばれた政府だから変えていいと、閣議決定をしてしまった。それを止められなかったのは非常に残念です。このまま行くと、日本の武器や技術が入った米軍の戦闘機、F35がイスラエルに供給されるという話なので、F35は間違いなくガザや西岸で使われる。レバノンやシリアでも使われることは目に見えている。日本の技術が人を殺すことに使われる、数年後に現実になる話だと思います。

 それに対する危機感は日本社会には伝わりにくいと思います。「ガザでひどいことがおきている、かわいそうだ、なんとかしたい」と思っても、まさか日本の一流企業の技術が入っているなんて思ってもいないでしょうし、そういう状況をおそらく想像できないと思います。でも、それは間違いなく目の前にある現実で、それとセットで集団的自衛権の話がある。アメリカ軍と一緒に戦争に行きましょうという話。

 想定しているのは中国だと思いますが、アメリカが日本の助けを必要とするのはイランやアフガニスタン、イラク。こういう地域にアメリカ軍と一緒に行ったら、完全に敵ですよね。アラブ社会やムスリム社会からしたら。

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Q. そうなった場合、パレスチナの支援活動を続けるのは難しくなりますか

 それは分からないですね。難しくなるかもしれないです。日本人に対する見方は変わってしまうと思いますから。今は、日本人は自分たちを傷つける人たちではないと好意的に見られています。ヨーロッパやアメリカみたいな、何を考えているか分からない政治的な理由で支援する人たちとは違って、自分たちと同じ目線で何とかしたいと思って来ていると。信用できる人たちと思われているのは、政治的な部分で目立たないからでしょうね。

Q. アラブ諸国全体でそう見られているのですか

 でも、それも少しずつ変わって来ていて、イラクに派兵されたことは知られていますし、「どうせ、日本はアメリカの後ろにくっついているだけなんだろう」とたまに言われることもあります。今は「たまに」でも、それが増えていくと、日本のパスポートは安全ではなくなるんだろうなと思います。そうなった場合、安倍首相がいっている「日本人を守るために」という理由が逆転してしまいますよね。集団的自衛権を行使したからこそ、危険に晒される日本人が増える。それは国民を守ることになるのですか?その理由は筋が通っているんですか?と私は疑問に思うし、問いたいですね。

情報戦

Q. パレスチナとイスラエルの話に戻りますが、今回、パレスチナを支持する人たちが、シリアの内戦写真や合成写真などをSNS上で拡散したことが目立ち、それがBBCでも報じられました。情報戦について教えて下さい

 パレスチナを支持する人たちの間で、本当に現状を世界に伝えたいという意思があるのであれば、慎重に事実確認をして伝えるべきだと思います。誤った情報は逆効果になってしまいますので。

 一方、イスラエル政府の中にも宣伝省みたいな省庁があり、国の正当性を高めるための戦略が取られています。イスラエルのネット新聞、Ynetも報じていましたが、今回のイスラエルの攻撃の正しさをブログやネットで情報発信するために、400人がボランティアで集められたと。

Q. 興味深かったのが、例えばNHKの報道一つを取って、イスラエル支持者からはNHKはアラブよりの報道しかしないという声が目立ち、パレスチナ支持者からは、NHKはイスラエル寄りだという真逆の批判がありました

 中東がそういう場所だから、というのは乱暴な言い方かもしれませんが、例えば、クルド人からしてみれば、イスラエル万歳なんですね。アラブ人をやっつけているイスラエル人万歳と。クルド人はそれまで、アラブ世界で抑圧されてきたので、イスラエルを熱烈に支持したりする。シリアでもシーア派、スンニ派問題があり、レバノンでもあれだけの内戦状態で、泥沼の殺し合いをしていたりする。一つの正しい意見というのは、多分、中東には存在しないのだと思います。

 ただ、パレスチナ人からしてみたら、イスラエルが建国されたことで自分たちが追い出されて、難民にさせられて、さらに封鎖されてどうにもならない。人間の最低限のレベルで暮らし、人間性を否定させられるような生活を強いられているという現実の中で、彼らから見えているものは、彼らにとってはやっぱり正しい。

 それをイスラエル人が受け止めるかどうかというのは、イスラエルの問題で、それを受け止めないという選択を今は取っていますけど、それがいつまで続くのでしょうか。本当に、イスラエルの安全保障にとって正しい道なのかどうかは、第三者から見ていると、このままでいいのか疑問に思います。

 イスラエルの中で育っているイスラエル人は、軍隊に行き、イスラエルが常に攻撃に晒され、ユダヤ人は常に差別されているという意識がやはりすごく強い。それは、教育の中で植え付けられたものであるし、家族の歴史がそもそもホロコーストの歴史を持っていることもあります。イスラエル以外に帰るところはないだから、守らなければいけないという意識がある。それに、軍隊でやってきたことを否定すると、自分の人生を否定することにもなるので、そこは否定できない。そうした色々な事情があるとは思います。それを守るために、イスラエルの一方的な主張が正しいと、言い続ける気持ちも分からないでもありません。ただ、現実としては、世界はそのように動いてない。だから、あまり過剰になってしまうと自分たちに跳ね返ってくるのだと思います。

Q. イスラエルが孤立してしまうと?

 そうなんです。ただ、孤立するということは、ある意味、イスラエルにとっては、自分たちの正しさでもあります。国を守る理由にもなるし。残念ながら答えはないというか…。よくユダヤ人がいうのは、「いくら非ユダヤ人のいうことを聞いても、結局お前たちはユダヤ人だと言われるし、聞かなくてもやっぱりユダヤ人だねと言われる。どっちにしてもそこからは逃れられない」と。

 それを、第三者がどうこうするというのは、難しいです。ただ、一つ、JVCとしては、国際人権法は守られるべきだという立場です。なので、そういう意味でイスラエルが何を言おうが、ハマースが何を言おうが、やっていることが国際方に違反すれば「違反」だということ。それだけの話です。裁判をして決着をつけて、イスラエルが国家として国連で承認された国である以上、国際法は守るべき立場にあるので、一般の民衆の感情は横に置いておいて、国際法は守らなければいけない。じゃないとイスラエルの立場も悪くなりますよ、ということですよね。

Q. 国際法に違反しているイスラエルに対し、国際世論がもっと声をあげるべきだと

 国際世論も声をあげないとですし、アメリカが拒否権を使うことをやめないといけない。

 ただ、ヨーロッパとアメリカはもう解決策を出しています。イスラエルとパレスチナの二国間、主権を持った二つの国。西岸とガザでパレスチナ人たちの主権を認めるということは、欧米社会はすでに宣言しています。イスラエルが占領地ではない、ガザは危険だといくら主張しても、世界はそういう流れになっているわけで、後はどう実現するかという方法論やタイミングの部分で、意見が割れています。イスラエルの安全保障とどう両立するかで、意見の対立が起きているということです。

イスラエル国内の歴史教育

◆ジャバリヤ市でJVC/AEI事業の活動(地元で入手可能な安価で新鮮な野菜・果物を使って栄養価の高い料理の作り方を教え、子どもの栄養失調を改善・予防することを目的としたクッキング・デモンストレーション)に参加した子どもたち。2013年11月21日ー写真:今野泰三

Q. 今野さんはいつパレスチナに戻るのですか。前回と全然違った街の風景が広がっているのでしょうね

 8月末に戻る予定です。復興するのも早いですよ。慣れている、という言い方は悪いですけど、破壊されて直して、破壊されて直してと彼らはやってきています。破壊されると復興支援や国際援助も入ってくるので、仕事も生まれる。悲しい話ですが…。

 そうでなければ、ガザがどんどん忘れられているといくと思います。ニュースにはなりませんが、空爆はこれまでも日常的に行なわれてきたし、去年度もイスラエル軍による攻撃で25人が殺されています。ある意味、空爆と封鎖が日常化しています。希望もなにもない状況の中で、大規模の空爆をうけて初めて世界の注目を浴びるという皮肉な状況があるんです。

Q. イスラエル市民が、今以上にガザの現状を知ることは必要でしょうか

 ガザはイスラエル人にとっては恐怖の塊というか、怖いというイメージしかないと思います。でもいくら相手を潰そうとしても、同じことをやったら違う勢力が出てくるだけです。人を、一方的に殺してもなんとも思わない人たちはいません。それは憎しみに変わり、苦しみに変わり、それが違う形で出てくるだけで、繰り返されるだけではないでしょうか。

 最近、イスラエル国内で、歴史をちゃんと教えないということが問題になってきています。何もないところに2000年をかけてようやく自分たちの土地に戻り、国を作った、そういう歴史として教えると、パレスチナ人の言っていることは理解できないと思うんですよ。

 パレスチナ人にしてみれば、国ができて追い出されて今に至る。それを、ちゃんと教えないといけないと思うんですよ。実はそれを教えている学校が出始めています。左派の私立校ですが、教科書はある程度自分で作って教えられるので、イスラエル、パレスチナの歴史両方を教えましょうという取り組みも行なわれています。ユダヤ人とアラブ人の共存を目指す村を作ったりとそういう試みが少しずつ広がっていけば、他に解決策がないという中で、変わってくると思います。

共存を懐かしむパレスチナの人々

 パレスチナ人も言うほど、ユダヤ人を嫌いなわけではないんです。彼らは反ユダヤ主義者ではないですし。ユダヤ人だから反抗しているわけではない。単に、自分たちを追い出して、今だに追いだそうとしてることに抵抗している。それを理解した上で話し合っていけば、何かしらの解決策はあると思っています。

 パレスチナ人の原則的な立場としては、併合は違法であり、受け入れられないと言っていますけど、少なくとも東エルサレムに住むパレスチナ人の中には、「イスラエル政府の方がましだよね」という意見もあります。イスラエルが経済的にも上ですし、技術も持っているし、知識的にも上だったりするので。はっきりは口に出さないけど、併合を受け入れている人たちは少なからずいます。

 ガザについても、67年から93年、オスロ合意までは、イスラエル側で働いていた人たちは何十万人といたので、今の40代〜60代の人たちは、いい思い出を持っているんですよね。イスラエル人と一緒に働いて、「ガザにイスラエル人が遊びにきて魚を食べていった」と、私にも話してきます。「ああいう時代が良かった」、「戻りたい」と。

 そういう関係を作る努力をしていかなければいけなくて、その為には、まず、ガザを封鎖して、ひたすら苦痛を押し付けるような状況は終わりにしないと、問題解決には一歩も近づかない。逆に遠のくと思います。少しずつ封鎖を解除していき、パレスチナ人に生きるスペースを与える、息ができる生活の場を与えるというのは、安全保障上も、人道的にも、道義的にも絶対に必要だと思います。

Q. 以前、「プロミス」という映画でイスラエルとパレスチナの子どもたちが交流するというプロジェクトがありましたね

 私も交換留学などをやればいいなと思っているんですよね。プロミスのような活動も、小さい時から長く続ければ、やはりそこは人間同士なので意味があると思います。やっぱり考えるわけじゃないですか。仲の良かった人たちが向こうにいて、そういう目にあっていたら。

※映画「プロミス」ーhttp://www.amnesty.or.jp/aff/about/archive_2009/promiss.html

Q. 一人の人間が考えること、行動することには意味があると

 私はそうだと信じています。それが集まって初めて物事が変わっていくと思うので。(取材・文:ぎぎまき)

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