
「川内原発再稼働が決まったら、この運営の方法、いわば鹿児島方式が全国に広まってしまうのではないか」――。
10月29日(水)、鹿児島県日置市にて川内原発再稼働に関する手続きの一環として、住民説明会が行われた。運営側の不備や、説明不足を指摘する声が鳴り止まぬなか、質疑応答を打ち切る形で会は幕を閉じた。一夜明けた10月30日(木)、IWJは、鹿児島市内の若い世代による反原発運動の中心、天文館ATOMS代表の鮫島亮二氏にインタビューした。
川内原発3号機の増設計画の草創期から抗議を続けてきた天文館ATOMSは、参加しやすい雰囲気を重視した活動を進めてきたという。
薩摩川内市長が再稼働に同意し、川内原発稼働への道筋が現実的なものになるなか、これまでの活動を振り返り、今後の活動をどのように描いていくのか、鮫島氏に聞いた。
- 記事目次
- 「開催した、という事実だけが欲しかったんでしょう」――アリバイ作りとしての住民説明会
- 「全国どこへでも抗議に行きます」――第二、第三の再稼働候補地へ向けたメッセージ
■Ustream録画(00:15~ 50分間)
- 日時 10月30日(木) 13:30〜
- 場所 鹿児島市内のレストラン「チチビスコ」
「開催した、という事実だけが欲しかったんでしょう」――アリバイ作りとしての住民説明会
記者「昨夜(10月29日)行われた、日置市での住民説明会に参加されての感想や、批判の多かった運営方法について、ご意見をお聞かせください」
鮫島氏「住民説明会への申し込みの葉書を出しても、返信がないということがありました。また、住民説明会場にて、座席指定があり、誰がどこに座っていて、どんな発言をしたのかを、(当局が)把握できる仕組みになっていました。
これまで、鹿児島県5ケ所で住民説明会がありました。そこでは、『100パーセント安全というわけではない』という原子力規制庁の発言への疑問や、避難計画の説明会が行われていない、などという抗議の声がありました。
昨日の日置市の説明会は、それまでの5会場に参加した人でないと入れない、という、閉ざされた説明会でした。前回の説明会に参加しなかった人は県民ではない、と言っているようなものなので、運営はめちゃくちゃでしょう。説明会が紛糾するのは必然だと思います」
記者「私も昨夜の日置市で行われた住民説明会を取材したのですが、客席はまだまだ空いていました。水曜日の夜という、若い人はなかなか参加しにくい時間帯にあえて開催したためでもあるのでしょうか」
鮫島氏「鹿児島県の全市町村で説明会を開くべきだと思います。女性、特に小さな子どもを育てられている方は、遠方から参加しづらく、最低でも託児室を設けるべきだという意見書を提出しましたが、回答はありません。今回の説明会はアンケートさえありませんでした。参加者の意思や質問を吸い上げるためのアンケートを作ってくださいと、お願いしたのですが、これも無視されました。
しょうがないから、自分たちで自主的に紙を配って、回収しました。国、県側にとって、今回の説明会は、開催した、という事実だけが欲しかったんでしょう。
もし川内原発再稼働が決まったら、この運営の方法、いわば鹿児島方式が全国に広まってしまうのではないか、再稼働のスタンダードになってしまうのではないか、と思うと、すごく恥ずかしい。全国の皆さんには、鹿児島県に抗議をしてほしいと思っています。
避難計画だって、20分で説明できる内容ではないのです。各家庭にある防災無線ですが、非常時にこの電源が切れた場合、どうやって伝えるのでしょう? 耳の不自由な方はどうするんでしょう?
内閣府の人も不備があるということはわかっていると思います。(昨夜の説明会で)内閣府の担当者が『避難計画に100パーセントはありません。いきなり完璧を求めたら、避難計画を改善するための余地がなくなります』と言っていて、そういう問題ではないでしょう、と思いました。
この間、川内の海から風船を飛ばして、どっちに行くか、という実験をしました。高度が上がるにつれて、偏西風の影響を受け、東側の熊本、宮崎で風船が発見されることとなりました。もし、原発事故が起きると(放射能が東へ広がり)、日本全国、住むところがなくなります」
記者「昨夜の住民説明会で配られた資料は、内容的に省略されたものでした。例えば、テロのことには全く触れられておらず、そのことについて、手を挙げて質問をされた方もいました。『9・11同時多発テロのような、航空機が突っ込む、というようなテロに対して、どう対処するのか』、というその質問に対し、主催者側は、『新規制基準では、そういったリスクについても考えています』と言いながら、まったく具体的な手段については言及しないままでした」
(IWJ・小田垣大志)
「全国どこへでも抗議に行きます」――第二、第三の再稼働候補地へ向けたメッセージ
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