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2014/06/26 「犯人探しをしても、地方議会の問題は改善しない」~セクハラ発言をうけた31歳の女性議員、水野ゆうき我孫子市議インタビュー(ぎぎまき記者)

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 6月18日、都議会の本会議中に発生したセクハラやじ問題は大きな波紋を呼び、この騒動の中で、政界では同じようなセクハラやじが横行していることが明るみになった。4月の衆議院総務委員会で、日本維新の会の上西小百合議員に対し、自民党の大西英男議員が「まず自分が子どもを産まないとダメだ」などとセクハラやじを投げていたことが判明。問題は国会にまで飛び火し、終息する気配を見せない。

※2014/06/24 「野次は一人ではなかった」 塩村文夏都議が、女性を蔑視する野次が飛び交う東京都議会の空気を批判

 セクハラやじについては、地方議会の方が顕著だ。復数の地方議員たちが、自身の被害体験をSNSで告白している。岩上安身がコメンテーターとして出演した24日(火)放送のテレビ朝日「モーニングバード!」でも、地方議会のセクハラやじについて取り上げている。

※【岩上安身のツイ録】世界から厳しい視線 鈴木章浩都議の「言葉による痴漢行為」と尖閣上陸「モーニングバード!」で岩上安身がコメント

 中野区議会の中村延子議員は19日、自身のツィッターで、「さすがに議場では言われた事はありませんが、平場になると『議員なんてやめて結婚しろ』と各級議員から100回以上は言われた事があります」と明かした。個人に反省を求めても、政治の場を変えなければ、問題は改善されないとも訴えている。

 同じく中野区義である森隆之氏も塩村都議の件をうけ、「驚きはありません。もともと、都議会って『そういうところ』という認識だったからです」とつぶやいている。都議会、国会でのセクハラやじ問題は、氷山の一角である。

  • 記事目次
  • 女性議員による、「生理なの?」発言
  • 自民党議員だったら、やじは飛ばなかった
  • 「謝って下さい」すぐに謝罪を求める
  • 可視化することで抑止力になる

  • 日時 2014年6月26日(木) 13:30頃〜
  • 場所 品川近辺
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女性議員による、「生理なの?」発言

 「もしあれが、自民党の女性都議だったら、同じようなやじが飛んだでしょうか」——。

 IWJは26日、セクハラ発言を経験した、千葉県我孫子市の水野ゆうき議員にインタビューを行なった。過去、女性蔑視の発言を幾度と受けてきたという水野議員に、当事者の一人として、今回のやじ問題をどう見るかを聞いた。

 中村区議同様、発言者個人の問題ではなく、地方議会の仕組みやあり方に改善点があると指摘する水野議員は、犯人探しに焦点をあてた報道についても疑問を投げかけた。

 水野議員は、現在31歳。我孫子市議会の中では、最年少の女性議員だ。2011年11月、政党や組織の後ろ盾がない無所属で立候補、28歳という若さで3位当選を果たした。議員となって3年目を迎えた2013年の6月、水野議員は議場で、塩村文夏都議同様、セクハラ発言を受けている。

 「今日はパンツスーツだけど生理なの?」

 2013年6月の我孫子市議会で一般質問を終え、席に戻ろうとした水野議員は、近くにいた女性議員からあり得ない一言を浴びせられた。何の目的でそんな発言をしたのか分からないが、不愉快な想いを与えることは分かっての一言である。

 「本会議中ではないにしろ、男性議員が8割を占める議場で言われた時は、不愉快で恥ずかしかったですね。でも、もっとショッキングなことが別にありました」

 今年3月、さらに彼女の気持ちを傷つけた出来事があった。

 3月の本会議の閉会日となった3月20日、我孫子市長により、副市長と監査委員の人事案件が提出された。監査委員の議案に納得がいかず、賛成できなかった水野議員は、採決中に議場を退席するという行動に出た。自身の意見を表明したに過ぎないのだが、新人の女性議員による「退席」は、一部の議員から反感を買った。

 その日開かれたという議員懇談会の場で、自民党のある男性議員が、水野議員の頭の上に手をぐっと押し付けながら、「そんなんだから結婚できないんだよ」という暴言を浴びせたのだ。

 「とても悔しかった。退席したからといって、ああいうことをされることは侵害。女性議員に言われた一言よりも傷つきました」と、水野議員は当時を振り返った。

自民党議員だったら、やじは飛ばなかった

 なぜ、こういう問題が起きるのか、水野議員はこれまでも自分なりに原因を探り、考察し、ブログなどで問題提起してきた。

 不適切発言がまかり通る理由の一つには、当然、発言した議員のモラルや倫理観の低さにあるが、他方、地方議会の仕組みがそうさせるのではと、水野議員は指摘する。

 「今回は、みんなの党の女性議員に対するやじでした。もしこれが、今、大変勢いのある自民党議員だったら、同じようなやじが飛んだでしょうか。私は飛んでいないと思います。やはり、与党の方が『上』という意識がそこにあるのではないでしょうか」

 水野議員は、もし塩村議員が自民党会派に所属していたら、やじはなかったのではないかと分析。仮に水野議員が与党に属していたら、やじの対象にならなかったどうかは定かではないが、確かに、騒動後、都議会自民党の動きは鈍かった。都知事である舛添要一氏自身もやじが起きた18日、議場にいながらも、目の前で起っていることを把握していなかった。それどころか、笑みさえ浮かべていたのではと批判された。騒動になった後の定例会見の中では、「知事には対応する権限はない」と釈明、笑みについても否定している。共産党都議団が自民党会派に議会運営委員会の開催を求めたことについても、3日の時点で未だ明確な回答をしていないといい、鈴木都議一人の謝罪でこの問題に幕引きを測ろうとする与党の対応に未だ批判は止まない。

※2014/06/20 「早く結婚したほうがいい」とのヤジの際、笑みを浮かべていた舛添知事が釈明

 地方政治に政党政治が持ち込まれていることを強く懸念すると話す水野議員だが、それだけではない。「二元代表制」にあるべきではない、与党vs野党という構図も、期数の長い重鎮議員の意見がまかり通ってしまうという議会の風習も、水野議員は納得できないのだ。

「謝って下さい」すぐに謝罪を求める

 「毅然とした態度を崩さないようにしてきました」

 水野議員は、こうした既存の議会風土に埋没しないよう、常日頃から「是々非々」を貫いているという。新人、女性、無所属であっても、市民から付託された一議員であることは変わらない。市民のために仕事をするのが、地方議員の仕事であるという信念を崩さなかった。セクハラ発言を受けた時も、その都度、相手に謝罪を求めてきたという。

 「生理なの?」と言ってきた先輩の女性議員に対しては、その場で、「謝って下さい」と伝えた。「だから結婚できないんだよ」と頭に手を押し付けてきた男性議員についても、間を置かず、謝罪を求めた。「女性を差別しています。公私混同しないでください」とも伝えた。両者とも、不適切発言を正式に認め、水野議員に謝罪の言葉を述べたという。

 当時のことを、笑顔で颯爽と語る水野議員だが、政治家になってから、急激に白髪も増えたという。見えない所で何度も悔し涙も流してきた。大学卒業後、就職した企業で養ってきた一般常識や倫理観が、政界の場では通じなかったからだ。

 「一人の議員としての政治的判断を、重んじる空気になってきた気がします」

 それでも、毅然とした態度を崩さず、自分の主張をはっきりと伝えていくことで、周囲の姿勢も少しずつ変わってきたと話す水野議員の表情は和らいだ。

可視化することで抑止力になる

 水野議員は過去、自身が受けてきた不適切な言動について、発言者の名前や所属会派は明かしてこなかった。犯人探しをして、批判することもなかった。ただ、日常的に議会の様子や自らの経験をブログやSNSを通して可視化してきたという。それを切り口に、地方議会の現場で見られる議員のモラルや倫理観の低さを批判し、改善するための取り組みを市民に訴えてきた。可視化することは同時に、心ないセクハラ発言の抑止力や予防にも繋がっていると話す。

 今回の騒動で、セクハラやじを飛ばすとどうなるか、その反響の大きさが身にしみた議員は多かっただろう。特に男性議員は襟を正すきっかけとなったはずだ。水野議員はこれを契機に有権者も、自分が住む町の政治について今一度、関心を持ってくれればと願う。

 「有権者はどうしても、国会に注目が行くかもしれませんが、ぜひ自分の住む町の選挙に感心を持って欲しい。選挙活動の時は、候補者は耳障りのいいことしか書かないし、言わない。その人が、議会でどんな活動をしてきたのか検証してから投票して欲しいと思います」

 インタビューの最後に、水野議員に地方政治のおもしろさについて聞いた。

 「自分の政策が非常に通りやすいのはあります。国政では難しいことです。市政と市民の距離が近いので、市民のみなさんが日頃困っていることを、解決する仕事ができるということ。目に見えるので、達成感にも繋がりますね」

 これまで、我孫子市議会では、3人以上の議員で会派を組むことが求められてきたが、水野議員はこの制度にも疑義を唱えてきた。結果、今では2人から会派を組むことが許され、ようやく特別委員会にも参加できるようになった。そして現在、今年3月に設置された議会改革特別委員会で、議会の最高規範となる「議会基本条例」作りに取り組んでいるという水野議員は、議員のモラルや倫理観を条例化することで、セクハラやじがまかり通らない議会の在り方を目指している。(IWJ・ぎぎまき)

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